「紙モノ」整理がもつ世代的な要素とは

世代的要素①年を重ねている分、「思い出」の「紙モノ」が多い

これは「紙モノ」に限らず、すべての片づけにいえることですが、思い出があるものは気持ちが乗っている分だけ捨てにくく、片づけの判断が難しくなります。

例えば卒業アルバム、卒業証書、過去の給与明細などです。思い入れのある仕事の書類などを大事にとっているケースもあるでしょう。

年齢を重ねれば重ねるほど思い出も増えていくので、こうした書類を手放すことが難しくなっていくのです。

世代的要素②「なりたい自分」の情報が含まれているので捨てにくい

古い写真を見た時に、当時の思いがよみがえり手が止まるというのはよくあることです。つい整理から逃げて見入ってしまい、結局日が暮れて再び押入れに押し込んで終わり……ということを繰り返してしまうこともあります。

例えば40年以上前にがんばった受験の赤本は、過去の自分への懐かしみかもしれません。それが自信の場合もあるし、哀惜やこだわり(執着)になっている場合もあります。

また60代は、「自己啓発」世代です。本棚に並ぶ筋トレ本や英検の攻略本は、なし得ていない自分を塩漬けにしているのかもしれません。これから先どうしたらいいかを考えること自体を先のばしにしていることもあります。

こうありたい自分や現実と向き合うこと=将来を考えること自体を先のばしにしているースです。

世代的要素③目を通したことで、かえって情が増す

「紙モノ」整理で厄介(やっかい)なのは、久しぶりに目を通すことで、当時のことをあれこれ思い出し、新たな愛着が湧いてきて捨てにくくなることです。

人は接する時間が長いモノに好感を持つ傾向があります。心理学では単純接触効果といわれています。同じコマーシャルがネットやテレビで繰り返されるのは、この効果をねらっているためです。

ただ、「紙モノ」整理の場面では、いつもそこにあるからとっておくという、結局捨てられないループにはまり、愛着が執着に変換されていくのです。

●第3回(即席のエンディングノートが完成!簡単&スマートに「紙モノ」を整理できる魔法の5ステップ)では、書類の中でも権利証や通帳など、プラスの財産で現物がある「資産モノ」の整理術について解説します。

『「これから」の人生が楽しくなる! 60歳からの「紙モノ」整理』

渡部亜矢 著
発行所 青春出版社
定価 1,650円(税込)