変わってきた「おひとりさま」の意味
今からおよそ40年前の1980年には、日本で一番多かったのは夫婦と子どもの世帯で、全体の4割を占めていました。2019年には、単独世帯が一番多い世帯となり、全体の3割を占めています。人口は減少している一方で世帯数は増加しており、私たちの暮らしの基盤が「家族」や「家庭」から「個人」へとシフトしていることが分かります。
その1つの要因が未婚率の上昇です。50歳時の未婚割合は1980年時点では男性3.9%、女性4.3%でしたが、2020年には男性26.5%、女性17.5%に。2040年にはそれが男性29.5%、女性18.7%になると推計されています。
「おひとりさま」が初めて注目されるようになった2000年ごろは、経済的に自立した女性が1人で食事や娯楽を楽しむといった新たな消費行動が脚光を浴びました。その流れ自体は第3次おひとりさまブームと言われる現在も続いており、「ソロ活」という言葉も生まれています。
一方で、2011年に発売された『おひとりさまの老後』(上野千鶴子著)がベストセラーになるなど、人生の終わりをどのように“ひとり”で迎えるか、それまでの高齢期をどのように“ひとり”で生き抜くか、ということも大きなテーマとして浮かび上がってきています。
老後というのは誰にとっても、心身が衰えてこれまでできたことができなくなったり、大切な人を亡くしたりと、さまざまな喪失を経験する時期であり、最終的には自分の死が待っています。その過程で、これまでは自由を与えてくれていた「ひとりであること」の意味が、いつしか「そばで助けてくれる人がいないこと」に変わってしまうことが、徐々に認識されるようになってきたのです。