おひとりさまの高齢期への注目が高まっている

高齢期に関しては、この「そばで助けてくれる人がいない」ことは、必ずしも独身の人だけの話ではないことに注意が必要です。

結婚していても配偶者が亡くなればおひとりさまだし、配偶者がいてもお互いに高齢になって助け合う余力がなければ、おひとりさまが2人いるのと同じことです。子どもがいても離れて暮らしていたり、関係が悪かったり、子どもに余裕がなかったりすれば、助けを得るのは難しいでしょう。そういった可能性を考えたとき、「自分は絶対おひとりさまにはならない」と言い切れる人は果たしてどのくらいいるでしょうか。

なぜ「そばで助けてくれる人がいる」ことがそれほど重要なのかは、実際にその助けを必要とする場面にならない限りはなかなか分かりません。それはおひとりさまに限らず、今、健康で自立した生活を送っている私たち皆がそうでしょう。

老後とはいつのことなのか、何が起こるのか、どう対処できるのかといったことについて、実は私たちはそれほど多くのことを知っているわけではありません。子世代が親世代の面倒を見るのが当然だった時代はそれでもよかったかもしれません。何かが起こって自分で対処できない場合は、子世代が代わりに対処してくれたからです。

しかし今はそのように、何も備えなくとも自然に誰かが肩代わりをしてくれることは期待できないでしょう。「家族の個人化」という言葉があるように、たとえ家族同士であっても、それぞれの人生、それぞれのライフスタイルがあることが当然のこととなっているからです。

また、長寿化に伴って、“子世代も高齢者である”ことも珍しくなくなっています。そういう意味では全ての人がおひとりさまになる覚悟を持ち、自ら老後に具体的な備えをしておくことが求められている時代といえます。

これから本連載では、お財布事情、介護問題、お墓問題、住宅問題、金融商品・遺言相続といったテーマで、おひとりさまが直面する課題について考えていきます。