エネルギー価格の高騰で過去最高益に
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、3月に2022年12月期の決算を発表しました。ロシアのウクライナ侵攻などを背景とした原油高により、純利益は前年比46%増の1611億ドル(約21兆円)となり、2019年の上場以来過去最高を記録しました。サウジアラムコは、今後も原油・ガス開発への投資を継続します。
世界的なエネルギー価格の高騰は、産油国に莫大(ばくだい)な利益をもたらしているのです。記者会見でサウジアラムコのナセル最高経営責任者(CEO)は、「過去最高益は原油価格と販売量の上昇によるもので、この傾向は当面続くと予想している」と強調しました。
サウジアラムコは、原油生産能力を2022年の日量1200万バレルから2027年までに日量1300万バレルに引き上げる計画を発表しました。同社はまた、2030年までに天然ガスの生産量を50%以上引き上げる計画です。国内の油田や石油施設での増産投資を継続するほか、天然ガス貯蔵施設の建設も進めています。また、中国東北部での大規模製油所開発への参画など、サウジ国外への投資も継続するのです。
サウジアラムコは世界最大の産油企業であり、世界のエネルギー市場における主要プレーヤーです。同社の生産計画は、世界のエネルギー価格と脱炭素化の進展に大きな影響を与えるでしょう。
サウジアラムコは2000年代初頭、「世界をリードする総合エネルギー・化学企業になる」というビジョンを掲げ、さらなる多角化を進めてきました。石油から生み出される価値をさまざまな形で提供することで、石油・ガスの伝統的な市場や用途を超え、より環境に優しく効率的な石油の生産と消費を可能にする新しい技術ソリューションに投資してきたのです。新しい高性能エンジンや燃料による輸送効率と持続可能性の向上も、そうしたソリューションのひとつです。
サウジアラムコは、数十億バレル以上の石油と数兆立方フィート以上のガスを、われわれだけでなく、サウジアラビアとその国民にとって価値あるものに変えていくことを目指しています。そして、信頼されるサプライヤーとして、持続可能なエネルギーを世界に提供し続けたいと考えているのです。
さらに業績連動型の配当をプラス
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは2023年3月9日、業績連動型配当を導入すると発表しました。これは基本配当に加えて支払われます。2022年10-12月期の基本配当は195億ドル(約2兆6300億円)でした。
この発表を受けて、サウジアラムコの株価は昨年9月以来の高値まで上昇しました。
世界最大のエネルギー企業であるサウジアラムコは、新たな配当について「基本配当と対外投資などその他の金額を差し引いたサウジアラムコの年間フリーキャッシュフローの50%から70%の間で、年間業績と連動して決定する」と説明しています。
この配当方針の変更は、サウジアラムコの財務状況が改善していることを示しています。また、サウジアラムコが事業拡大のために投資家からより多くの資本を調達しようとしていることも示しているといえるでしょう。
サウジアラムコは世界3位の時価総額を誇りますが、個別株は購入できません。ただ、「アムンディ・アラブ株式ファンド」を通じて間接的に購入することはできます。また、2022年にロンドンやシンガポール、または他の証券取引所に重複上場する可能性もあるとウォール・ストリート・ジャーナルの報道にあったので、今後の動向に注目です。
文/山下耕太郎