セゾン投信代表取締役会長CEOの中野晴啓氏が退任することになりました。とはいっても、本人は「不本意である」というコメントを出しているように、どうやら順当なサクセッションプランによるトップ交代ではない、という様相を醸し出しています。

共同通信社を発端に広まった中野氏退任の衝撃

当然ですが、この一件が報じられた後、投資信託界隈(何らかの形で投資信託について語ったり、書いたりしてご飯を食べている人たち)では、さまざまな意見が飛び交いました。

「草食投資隊」の一員として日本全国を隈なく回り、長期投資、積立投資の重要性を説いて回った中野氏だけに、急な退陣劇は一部の人間にとって衝撃的だったようで、ネットニュースやSNSなどを通じて、いくつか憶測が飛び交いました。

今回のように、いささか大きな出来事が起こると、メディアはそれを一斉に報じます。今回に関して言えば、恐らく最初に報じたのは共同通信社でしょう。

共同通信社は、加盟・契約関係にある日本全国の新聞社、放送局などに対してニュースを配信しています。特に全国紙のように日本全国に支局を持たず、主に地元のニュースを中心に追っている地方紙にとって、共同通信社から配信されるニュースは、全国規模のニュースを紙面に反映させるうえで、重要な役割を担っています。

したがって今回の件に関しても、共同通信社が報じたことによって、日本全国の地方紙が一斉に「セゾン投信代表取締役会長CEOの中野晴啓氏が退任」という記事を、ネット速報という形で掲載しました。

SNS発信のコメントは誤った情報の可能性も

この第一報が出た後、これもよくあることですが、投資信託界隈の人たちがSNSなどでコメントを書き始めました。自分自身が何を感じ、どう考えて発言するのかは、自由です。日本は言論統制の国ではないので、自分の感想をSNSで発信するのは、批判されるべきことではありません。

ただ、1つだけ注意しておきたいことがあります。それは、SNSを通じて流れてくる情報は、基本的に第三者からのチェックを、いっさい受けていない情報だということです。

例えば、新聞に掲載されている記事は、記者が取材をして執筆した後、編集デスクと呼ばれている責任者のもとに集められ、そこで内容に間違いがないかどうかチェックを受けます。

さらに、校閲部というセクションがあり、そこで誤字・脱字・衍字(えんじ:余分な文字)のチェックに加え、事実関係やデータに誤りや矛盾がないかを確認したうえで、ようやく紙面の形になります。

しかし、SNSを通じて流れてくる情報は、こうしたチェックを全く受けることなく、発信者から受け手に届いてしまうのです。だからこそ情報の鮮度が高く、速報性にも優れていると言えるのですが、発信者の情報が間違っている場合、誤った情報がそのまま世の中に広まってしまうリスクがあります。

実は中野氏の退任問題でも、専門家のコメントなどで「???」というものが散見されました。

メディアなどでも「専門家」という位置づけでコメントを寄せていますし、そういった専門家のSNSを、多くの人は「専門家のあの人がこう言っているのだから」と思って読んでしまうでしょう。しかし、その専門家のコメントが事実誤認だとしたら、どうなってしまうのでしょうか。