クレディスイスの買収とその影響

「ABEMAヒルズ」というニュース番組で、青山学院大学陸上部の原晋監督が、UBSに買収されたクレディスイスのAT1債を保有していたことを取り上げていました。

ご存じの方も多いと思いますが、クレディスイスのAT1債は、同社がUBSに買収された際、すべての価値が完全に償却されました。つまり投資家からすれば、保有していたAT1債が、完全な紙切れになってしまったことを意味します。

ちなみに、他のニュースによると、無価値となったクレディスイスAT1債の総額は160億スイスフラン。日本円にして2.4兆円でした。

それにしても、AT1債のような複雑なスキームを持つ商品を、こう言っては何ですが、投資に対する知識をほとんど持ってなさそうな原監督が保有していたことに正直驚きました。

原監督が抱いた怒りと無念

鈴木金融担当大臣の4月21日の記者会見では、金融庁の調査によると、国内の証券会社10社程度が、富裕層の個人ならびに法人の合計約2000口座に対し、約1400億円程度のクレディスイスAT1債を販売していたことが明らかになりました。このうちの1人が原監督だったということです。

原監督の怒りと無念さは、インタビューの映像からも十分に伝わってきました。原監督のコメントは以下の通りです。

「私が買った債券は白紙にされたんですよ。こんな処理の仕方ってありますか。ある種の詐欺ですよ、これは」。

「決してハイリスク・ハイリターンのものではなかったと私自身、認識している。そういった商品であるにもかかわらず、紙切れになってしまった。これが事実ですので、非常にショックを受けています」。

「営業マンとのやりとりでも『ローリスク・ローリターンでいいです。紙切れになることだけは避けて欲しい』と言って選んでいただいた商品がこれ(AT1債)だった」。

「こういう事態になることが0%ではなかったので、多少リスクはあるわけですから、そこまでの説明を果たしてされていたかというところは、疑問に感じている」。

「たぶん、約款に書かれているのかもわかりません。それを全部、我々素人が理解できるかというと普通、理解できませんよね。だから、倒産しないにもかかわらず、この債券が紙切れになるという理解は私には無かった」。

「安易な気持ちで投資に乗り出したら、私みたいな被害に遭う。被害に遭うと、人生が台無しになる。私のような被害者を今後極力出さないためにも、良いこと悪いことは伝えていく」。

おおよそ、上記のようなことをインタビューで答えていました。