賃金の受け取り上限額100万円に注意!

そんな賃金のデジタル払いについて、導入に当たっての基本的なルールを押さえておこう。

①導入に当たり、使用者と労働者の間で労使協定締結などの合意が必要

②導入事業所において、労働者は従来の賃金の受け取り方を継続可能。デジタル払いを希望していない人が強制されることはない

③キャッシュレス決済のアカウントなどで受け取れる賃金の上限額は100万円。
これを超えると労働者が指定した銀行口座などへ自動的に出金される

④デジタル払いと銀行振り込みの併用も可能

⑤デジタル払いによる賃金の残高は、最低月1回は手数料無料で払い出し(現金 化)可能。払い出し期限は、最後の入出金後少なくとも10年間と定められている

⑥現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められない

以上のルールを押さえたうえで、労働者目線で見たメリットとは一体何なのだろうか。第一に考えられるのが、キャッシュレス決済と連携したサービスを賃金からスムーズに利用できる点だ。

今までキャッシュレス決済を利用する場合は、現金や賃金を受け取る銀行口座などから「〇〇Pay」などのサービスへ資金移動する必要があった。しかし、キャッシュレス決済のアカウントに賃金が直接振り込まれれば、こうした手間が省ける。

加えて、銀行口座を保有していない労働者にとってはより簡単に賃金を受け取れる手段となる。例えばアルバイトとして勤務する学生や、外国人労働者が恩恵を受けられるケースがあるだろう。

一方で注意すべきポイントは、③に挙げた上限額100万円だ。賃金の振込先となるキャッシュレス決済のアカウントは、高額な賃金の振り込みや貯蓄のための口座には適さないといえる。

また、キャッシュレス決済や電子マネーなどに限った話ではないが、他人からの不正アクセス(ハッキング)やスマートフォンの盗難などにより、資金流出などの被害を受けるリスクがある。さらに、キャッシュレス決済を運営する事業者が経営破綻し、残高が失われてしまう可能性も考えられる。

ただし、経営破綻に関しては、4〜6営業日以内に全額払い出しが保証されるようにルール化されている。それでも破綻した事業者の保全額が不足したり、払い戻しに時間がかかってしまったりする可能性もゼロではないので注意したい。