株式投資をするとどうしてもうかるのか?

事業を拡大していくために必要な資金を集めたいと考える会社と、お金をもうけたいと考える投資家が、株式市場を通してつながっているしくみについてみてきました。ところで、投資家はなぜ株を買うともうかるのでしょうか?

株主は会社に資金を提供すると配当をもらえます。たとえば、日本の上場企業の株主になった場合、会社にもよりますが、一般的にはおよそ50年くらい株主になっていると、配当だけで提供した資金の元を取ることができます。

しかし、一般的に株式投資をしてもうかったという場合の多くは、買ったときの株価より高く売れたからもうかった、という話だと思います。つまり、配当をもらうことに加えて、株価の値上がりも期待して投資家は株式市場で株を買っています。となると、「なぜ株価が上がっていくと考えることができるのか」を知っておきたいところです。

その理由は、「そもそも会社は、利益を作り出すために関係者ががんばるようにできているものだから」です。

ある事業を行なっている会社の社員や経営者、取引相手などはみな、「今の生活をつづけて、できればもっと良くしたい」と願っています。そして、そのために「来年は給料が上がるように、商品やサービスをより多く売ろう」と思って仕事をしています。その結果が、会社の売上げから材料費や光熱費、社員の給料などを差し引いて残った「利益」です。

会社は利益を出せなければ、事業を続ければ続けるほどお金を損し続けることになります。つまり、たまには損を出すことがあったとしても、基本的には利益を出し続けていかなければいけないのです。毎年社員の給料を上げ、取引先の値上げ要請に応え、事業を拡大するのに必要な設備を買ったうえで、利益を残して株主に配当として渡さないといけないのです。

上場企業は多くの株主に事業の成績を常に見張られて、配当を支払わなければいけないというプレッシャーを感じながら事業を一生懸命行なっています。利益をあげられず配当も支払えない状態が長く続いた会社は上場廃止になり、最後には倒産してしまいますから、社員も経営者も必死です。

その結果として、上場企業の多くはきちんと利益を上げ、事業を拡大させ配当額を増やす力をつけていくので、投資家は将来の配当増加を期待して株を買います。こうして投資家の間でキャッチボールのように売買されながら、長い期間では株価が上がっていくのです。

ただし実際には、時には10年以上も株価が上がらないこともあります。このような理由が考えられます。

①会社が赤字を出し続けている
②国の景気が悪くて、利益を上げにくい経済になってしまった
③投資家の間でブームになった株を、高すぎる株価で買ってしまった

②はすべての企業にかかわることですが、①と③は個々の会社の事情です。

●第2回(「投資で本当にお金は増える?」の疑問はナンセンスな“これだけの理由”)では400年以上の歴史を持つ金融市場や債権投資について解説します。

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