株式の「上場」はみんなにメリットがある

そもそも株式会社ができた時には、会社の創業者(経営者)が自分のお金を使って会社を立ち上げています。つまり、創業者が経営者であり、投資家でもあり、株主です。この状態では、会社が事業を行なってあげた利益はすべて創業者のものとなり、配当を出すとしても創業者ひとりに支払われます。

創業者が会社の事業をより大きくしたいと考え、そのための資金が必要だと考えたとしましょう。創業者以外の人から資金を提供してもらうために、会社は株式を発行して、お金を出してくれた人に株式を渡します。この時点で、会社は創業者だけのものではなく、他人も含めた株主のものになりました。会社は創業者以外の投資家にも定期的に、確実に配当を支払うために、事業でしっかりもうけなければならなくなりました。

事業資金が足りていればこのままでもよいのですが、さらに事業を拡大するために、より多くの株主にお金を出してほしいと考えたとしましょう。そこで、経営者は株式を株式市場に上場します。

株式市場では、上場した企業の株式を誰でも売買することができます。先ほど、あなたがトヨタ自動車の株式を購入したら……という話をしましたが、これは株式市場で、上場されている株式を買ったということです。

たとえば、ある株主Aさんが渡された株式を創業者に売って、提供した資金を取り戻したいと考えたとしましょう。この時に事業の調子が悪かったら、創業者は株式を買い戻したくないと言うかもしれません。このように、事業資金を提供することは、そのお金が返ってこないかもしれないという危険があります。

ここで、その会社の株式が上場されていて、いつでも株式市場で売買できるとなればどうでしょうか。安い価格(株価)なら買いたいという投資家が現れれば、株主Aさんは少々目減りしたとしても、提供した資金の一部を取り返すことができます。つまり株式を上場することで、投資家はその企業に対して、より気軽に事業資金を提供できるようになるのです。株式を上場することは、投資家と企業のどちらにも大きなメリットがあります。

上場株式会社と投資家の関係を、下の図にまとめました。会社と投資家は配当でつながっているということがよくわかると思います。