東証がPBR1倍割れ企業をてこ入れ

東京証券取引所における市場の再編は、市場のコンセプトを明確化することだけが理由ではありません。上場企業自身に企業価値の向上を促すことも理由の1つです。

従来は、上場を維持するための基準が新しく上場するための基準より緩和されていたことなどから、上場後の企業に株価を維持する動機が芽生えにくい構造となっていました。今後は原則として新規上場基準と上場維持基準を共通化し、企業に株価をキープするよう促します。経過措置として新しい上場維持基準は猶予されていますが、2025年3月から適用される予定です。

さらに東京証券取引所は、株価の上昇を促す別の仕組みも設けると見られています。2023年2月に公表された「市場区分の見直しに関するフォロー会議」の資料では、「PBR」が1倍を下回るなど市場の評価を十分に得られていない上場企業に改善を促すよう要請する方針が示されました。

PBRとは「株価純資産倍率」のことで、純資産とは総資産から負債を除いた額のことです。PBRは、株価を1株あたり純資産で割って算出されます。例えば1株あたり純資産が100円で株価が50円なら、PBRは0.5倍です。100円を50円で買えるわけですから、一見すれば割安でお得な投資先に見えるかもしれません。

しかし、PBRが低い企業を割安と評価することもできますが、裏を返せば投資家に買われていない企業と見ることもできます。東京証券取引所が公表した仕組みは、そのような上場企業になぜ自社株が評価されないのか分析させ、その改善策の実施を呼びかけるものです。

要請に従って各社が取り組みを実施し、それを市場が評価すれば、株価が上昇するかもしれません。対象はプライムとスタンダードに上場する全企業で、2023年春に通知する予定です。