免税事業者には収入10%減の恐れが!?
適格請求書は、事業者が発行しようと思えばすぐに発行できるわけではない。発行に先だって、国税庁により「適格請求書発行事業者」として登録されなけばならない。そのためには事業地を管轄する税務署などで登録申請を行い、発行事業者としての「登録番号」を取得する必要がある。
この登録申請だが、すべての事業者が行うべきとは限らない。特に発行すべきかどうか慎重に検討したいのが、消費税の納税義務を免除された「免税事業者」だ。
消費税の課税期間において、課税売上高1000万円超の事業者は、消費税の納税義務がある「課税事業者」に区分される。前述した小売店や製造業者の例は、課税事業者同士の取引を扱ったケースだ。
一方で、課税売上高1000万円以下の事業者のほとんどは「免税事業者」と呼ばれる。免税事業者は消費税の納税義務がなく、販売先から受け取った消費税を自身の手元に残すことが可能だ。
インボイス制度には、こうした課税事業者と免税事業者における消費税負担の差を見直す狙いがあると見られている。その差をどのように見直すか。実は、適格請求書の発行は課税事業者にしか認めないこととされているのだ。
つまり免税事業者が「適格請求書発行事業者」となるためには、消費税の納税義務がある「課税事業者」にもならなければならない。消費税の標準税率10%を考えると、免税事業者にとっては単純計算で10%の収入減につながることが予想される。
このような背景から免税事業者のなかには、取引先へ配慮するために税負担を取るか、販売競争力が落ちるリスクを抱えて免税事業者のままでいるか、ジレンマを抱えている事業者も多い。インボイス制度にフリーランスや個人事業主の反発が多い理由には、こうした背景があるといえる。