国指定の請求書様式を定めた「インボイス制度」
さて、本題のインボイス制度は、こうした消費税負担の流れや納税額などを把握するための制度とされている。正確に把握するため取引でやりとりする請求書として、国が管理しやすい新様式「適格請求書(インボイス)」を定めたのだ。
この適格請求書だが、制度施行を機に全事業者に発行が義務づけられるわけではなく、あくまでも任意となる。そうは言うものの、消費税の流れを把握するという目的のため、多くの事業者に発行を促す制度設計がなされている。
具体的には制度がスタートすると、適格請求書に基づいた取引でなければ仕入税額控除が認められなくなるのだ。これがどういうことか、仕入れと販売、それぞれの側面で考えてみよう。
仕入れを行って請求書を受け取る場合、適格請求書を発行できる事業者からモノ・サービスを購入しなければ仕入税額控除ができない。そのため今まで以上の消費税による税負担がかかってしまう。負担を埋めるためには、今まで取引のあった販売事業者に適格請求書を発行してもらうよう交渉したり、発行できる事業者と新たに取引したりする必要があるだろう。
一方、モノ・サービスを販売する立場から見ると、適格請求書を発行できるか否かがカギとなる。上記の理由から発行できる事業者と比べて、販売競争力の面で劣ってしまうリスクがあるためだ。こう考えると販売事業者は適格請求書を発行できるように準備した方がいいかもしれない。
このようにインボイス制度は事業者間の円滑な取引を目指すうえで、基本的に適格請求書を発行・受領できる事業者にとって有利な制度といえる。