株式の平均保有期間
ちなみに株式の平均保有期間を見ると、年齢層が上がるほど10年以上の保有比率が上がる反面、20代~30代は83.6%が5年未満でした。
企業が技術開発などで付加価値を高めるには、5年、10年単位の時間を必要としますが、株式の平均保有期間が5年未満では、付加価値が高まる前に売却してしまうことになります。
年齢が若いからこそ、長期投資を前提に企業の付加価値向上を資産価値に反映させるチャンスに恵まれているとも言えます。ですので、特に若年層投資家の短期志向については、長期投資のメリットを十分に享受するための意識変革が必要でしょう。
主な注文方法
今回の調査報告は、主に個人投資家の意識を調査したものではありますが、証券会社を中心にして金融機関が考えるべき点もあります。
株式保有者に主な注文方法を聞くと、「証券会社や銀行等の店頭(店舗への電話注文、営業員が訪問しての注文を含む)」の回答比がかなり低いことが分かります。
60~64歳が20.7%、65~69歳が19.1%、70歳以上であれば26.2%と、現時点では年齢層が上がるほど金融機関の店頭での注文が認められますが、問題となるのは若い世代です。
20代~30代で金融機関の店頭に注文を出している人の比率は、たったの3.7%しかいません。40代でも5.3%、50代ですら10.4%です。
この年齢層の人たちが将来、60代、70代になった時、果たして金融機関の店頭で注文を出すようになるかと言われれば、その答えは恐らく「ノー」でしょう。
対面型証券会社の「未来」どうなる?
現時点で、日本全国に本支店を置いている金融機関は、まだ結構な数あります。しかし前出の注文方法に関する回答を見ると、果たして支店網をこのまま維持できるのかどうかは疑問です。
利用者がいないのに店舗を開き、顧客対応のためのスタッフを置いておくことは、業務効率の低下を招きます。
また、株式については早晩、売買委託手数料の無料化を推し進めるオンライン証券会社もあり、それが普及すれば、証券会社にとって株式の売買仲介は、少なくとも「飯のタネ」にはならなくなるでしょう。そうなると、特に証券会社の場合、店舗網を構えていることの意味が見いだせなくなります。
そして株式の売買委託手数料が大幅減になった時、それを投資信託の購入手数料ならびに信託報酬で賄えるかというと、これも疑問が生じる点です。
というのも、昨今のオンライン証券会社は、大半の投資信託の購入時手数料を無料にしているからです。しかも、扱っている投資信託の種類や本数も、かなり幅広いものです。
そうなると、店舗網を持つ証券会社は、ますます営業面で苦しくなっていくでしょう。支店を維持することすら難しい場合も考えられます。
オンライン証券会社が登場してから25年ほどが経ちましたが、店舗を持つ対面型証券会社は、店舗網とそこに属する人員をどう活用するべきか、真剣に考えなければならない時期に来たと言えそうです。