リスクを自動で調整してくれるターゲットイヤー型投資信託
ターゲットイヤー型の商品追加が多いのは、DC制度スタート時にはほとんど存在していなかった種類の投資信託だからです。近年の法律改正(※2)により、企業がターゲットイヤー型を採用しやすい土壌が整ったこともあり、運用会社が商品開発に力を入れるようになりました。
その結果、2015年以降に設定されたターゲットイヤー型は、比較的コスト(信託報酬)が低廉で、商品性がわかりやすいものが増えてきています。
※2 厚生労働省社会保障審議会に設置された「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」報告書(2017年6月)において、運用商品を選択しない者への支援に注目が集まった。その後、法令で運用商品数の上限は35本、ターゲットイヤー型はシリーズで1本と数えることが明示された。
企業型DC導入から数年が経過した事業主からは「導入時から、こういう投資信託があればよかったのに」という声が寄せられます。というのも、年金運用の基本的な考え方(分散投資が重要であり、若年時にリスクテークし、年代が上がるにしたがってリスクを逓減する)が、ターゲットイヤー型の投資信託で実践されているからです。
ターゲットイヤー型は、一般的に、若い世代向け、つまり目標年が遠い場合は、リスクの高い株式等の比率が高く、目標年が近づくにしたがって、リスクを抑えた運用(債券や短期金融資産など)に切り替わっていきます。たとえば、2000年生まれを想定したターゲットイヤー2060は、現時点では株式等の比率が高くなっていますが、時間の経過とともに、徐々に債券や短期金融資産の比率が高まり、30年後、40年後には今とは異なる資産配分の投資信託になっています。つまり、ほかの投資信託は加入者自身で年齢ごとに合った商品に買い替えるなどしてリスクを調整する必要があるのに対し、ターゲットイヤー型は受取時期までずっと同じ投資信託を保有できる「自動操縦機能付き」の商品といえるのです。
商品を追加しても活用する人が少ない!? DC担当者の悩み
運用商品を追加する企業型DCは増加傾向ですが、どの企業にも共通の課題があります。追加した運用商品を活用するDC加入者が少ない、という点です。
どうしたら追加の運用商品が活用されるのでしょうか。
一つには、運用商品の追加理由を企業が加入者に明確に示す、ということが必要です。ターゲットイヤー型であれば、今までにない投資信託であること、年代によって選ぶべき年限が異なること、長く保有できること、がポイントになります。
ほかの種類の投資信託、たとえばRIET(不動産投資信託)であればインフレ下での意味合いや株式型とは値動きが異なること、などを示します。ESGなどのテーマ性があるものであれば、その目的などを示すことも必要でしょう。
もう一つのポイントは、追加する運用商品をどういった層に使ってもらいたいのか、を事業主が意識しておくことです。
たとえば、リスクコントロール型(リスクを一定範囲内に抑えることを目標にしたバランス型投資信託)であれば、年代が上の層での活用がイメージされます。外国株式型や国内株式型のアクティブファンドは、運用に慣れてきている人向け、などです。