運用見直しは4割弱 多くの人がチャンスを見逃している

追加理由を示すだけでは十分ではないかもしれません。

既存の加入者が新しい運用商品を活用するには、「運用商品の変更」を伴うためです。

「変える」ことは、普段の生活においても、できれば避けて通りたいことではないでしょうか。しかも、それがお金のことであり、よくわからない仕組みであるなら、なおさらです。

DC加入者の多くは、最初に運用商品の資産配分を決定すると、その後に資産配分を見直すことがほとんどありません。

実際、野村證券が受託する企業型DCの加入者のうち、残高部分の運用商品を見直したことのある人(スイッチング経験者)は、加入期間5年以上に限定してみても、40%弱という結果になっています(運用商品の償還などの強制的なスイッチングも含む)。

信託報酬に1%の違いがあるだけで、累計200万円もの差が!?

具体的な数字を使って、「効果」を伝えることも必要です。
たとえば、同じ値動きをする投資信託で、信託報酬に1%の違いがある場合、毎月2万円ずつ40年間保有したら、信託報酬の累計には208万円の差が生じるという資料があります(※3)

また、運用商品の変更方法(掛金部分を変えるのか、残高部分を変えるのか)や、その効果についても、繰り返し周知する必要があります。いつでも変更でき、回数制限はないこと、(変更に伴う)手数料は一般の投資商品に比べて低い(あるいはかからない)こと、などです。

DC制度の運営を受託する運営管理機関や事業主には、特定の運用商品の推奨が禁止されています。追加運用商品の活用促進が、加入者にとってメリットと思われるときでも、特定の運用商品の推奨にあたらないようにしなければなりません。結果として、加入者に真意が伝わりにくく、活用につながらないということにもなるようです。

今後、資産所得倍増プランによる中立的アドバイザーが定着し、投資がより身近になることで、ここに書いたような課題が解決されていくのではないか、と期待しています。

※3 確定拠出年金の運用に関する専門委員会 第5回 資料1(2017年4月18日)