助言の対価は残高基準を取らず、時間や内容に応じた体系に
北國銀行グループの助言ビジネスはフィー体系も斬新だ。FDAが受け取る報酬は、助言に要する時間や助言内容に応じて決まる。具体的には、ライフプラン相談(90分)が1万6500円から、ファイナンシャルプランニング(資産運用の相談)が22万円、継続サポートが5万5000円から(いずれも税込み)といった具合だ。
投信販売など資産運用ビジネスの現状は、販売手数料に依存したビジネスからの脱却を目指し、大手証券会社などがすでに預り資産残高に応じたフィー体系を導入しているが、まだ根付いているとは言い難い。
一方、FDAが採用した体系は助言に要する時間などで対価が示されており、基本的に弁護士(法律相談での時間制)や医師(診療報酬での点数制)といったプロフェッショナルと同じ体系だ。助言ビジネスは資産を預かるのではなく、「専門的な知識や見解の提供」なので当然といえば当然だが、大手証券会社の残高フィーへの移行すら道半ばなのに比べ、「他に類を見ないほど先進的なかたち」(金融庁監督局)だ。
北國銀行グループが掲げているビジネスモデルは極めて意欲的だ。ただし、同グループが本拠を構える石川県で、有料の資産運用サービスを必要とする人をどれだけ見つけられるのかは、これからの課題だろう。「サービスは無料」と考える向きが少なくない中、FDAのフィー体系が受け入れられるかも未知数だ。
そこで注目すべきはこの助言会社の社名だ。「北國アドバイザリー」の方が自然に思われるが、実際はFDアドバイザリー。当局が提唱するFD(顧客本位の業務運営)にこだわったようにみえるが、同社設立の経緯を知る金融庁の幹部は、その背景を「石川にとどまらず、三大都市圏などで展開する狙いがある」と解説する。
その場合は北國単独ではなく、各地のFPや金融機関との連携も視野に入れているという。特に中立的アドバイザーに認定されるようなFPは、理念が一致する点が多いとみて期待を寄せている。北國銀行グループの助言ビジネスは始まったばかりだが、この取り組みが個人や金融業界の支持をどこまで集められるか、当局も注視している。
執筆/霞が関調査班・みさき 透
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。