「顧客の立場に立ったアドバイザー」(中立的アドバイザー)を巡る官邸と金融庁のやり取りを尻目に、北國銀行が資産運用分野での助言ビジネスを強化している。2021年5月に資産形成・資産運用の助言会社、FDアドバイザリー(FDA)を立ち上げたのを皮切りに、2022年11月には同行で扱う投資信託をアクティブファンドも含めて全てノーロードとし、資産運用ビジネスの主な収益源を販売手数料から助言フィーに切り替えている。今後は助言で得られるフィーを積み上げて収益の拡大を目指す考えだ。

金融機関のグループであるFDAが国などから中立的アドバイザーとして認められるかは不透明だ。だが、同社はすでに投資助言・代理業の免許を取得しており、仮に認定されなくても個別銘柄を示した提案が可能で、FPなどよりも踏み込んだ助言が可能だ。職域や学校での投資啓発や金融教育を見据え、「新たなアドバイザーの資格を取れるに越したことはない」としつつも、資格の認定条件の決着を待たず、「販売から助言へ」の転換を進めるという。

中立的アドバイザーにおける金融グループ会社の扱いは玉虫色

新たなNISAなどを通じた「貯蓄から投資へ」の推進役として期待される中立的アドバイザーだが、その議論は中途半端なかたちで休止した。金融庁が主催する「顧客本位タスクフォース」は2022年12月に中間報告を金融審議会に提出し、当面の議論を終えた。

そのため、現時点では同報告書を材料にこの問題を考えるしかない。ここには中立的アドバイザーの条件について家計管理や金融商品の知識などを有する他、①金融商品の販売を兼業していない、②顧客以外から報酬を受け取っていない――の2点が明記された。

これを読む限り、独立系のFPは当確だが、金融機関で投資信託などの販売に従事している者は除外、IFAも同様。他方、金融機関の従業員でも販売に携わっていない者やグループの別会社の社員の位置付けには解釈の余地がある。

これは「霞が関文学」の技法のひとつ「正確な曖昧さ」(選択肢Aは残っているが、Bは残っていない。Cは立場によって解釈が違う)に基づく書き方だ。こうした修辞を取るときは、ここまでの関係者の合意をいったんまとめるケースで、次のステージに移るまで肝心な点はボヤかしたままになる。

実際、国会が開かれて官邸が忙しくなってきたことに加え、カウンターパートの金融庁の市場企画局市場課も業態間の調整や金融教育などを担う金融経済教育推進機構(仮称)の設立に追われるため、2023年度予算が成立する3月末ごろまでは、中立的アドバイザーの議論は進展しないだろう。