幅広いユニバースから割安成長銘柄を厳選

相関係数が1だと、異なる2つの資産の値動きは同じになり、強い正の相関があるが、0に近づくほど正の相関性は弱まる。つまり株式ポートフォリオ、特にグロース株式でのポートフォリオを保有している投資家にとって、農業・食料関連株式は、リスク分散に有効な投資対象となる可能性が高いと考えられるのだ。

具体的に、ファンドの中身について見ていこう。まず、同ファンドの実質的な運用は、投資顧問会社である米国のラザードが行っていることだ。では、なぜラザードなのか。「今回、ラザードに投資顧問をお願いしたのは、同社が以前から農業・食料関連ファンドを運用しており、そのトラックレコードが堅調に推移していたからです。また、運用チームはコモディティの運用も行っており、農業・食料分野で重要なコモディティの知見も活かせる事もラザードを投資顧問に迎えた理由のひとつです」(西岡氏)。

2022年12月末時点における組入銘柄数は33銘柄。アクティブ運用ファンドのなかでも、ポートフォリオの構成銘柄数はかなり少ない方だろう。ただ、これは相当に銘柄を厳選した結果であると考えられる。「農業・食料関連株式というと農業、農作物、食品、小売というイメージがまず先に立ちますが、このファンドでは、これらに加えて肥料・農薬や医薬品、バイオテクノロジー、産業機械、など、さまざまな領域にまたがってユニバースが設定されています」(西岡氏)。

また農業や食品分野は大型企業、超大型企業が主力を占めるが、同ファンドには中小型企業も30%程度、資金を振り向けている。これは、中小型企業の中から最先端のテクノロジーが出現する可能性を、パフォーマンスに反映させるためでもある。非常に幅広いユニバースから、指数構成外銘柄をピックアップするために、銘柄選定に際してはデータサイエンスのテクノロジーも駆使している。

農業・食料関連株式への投資というと、何となくディフェンシブなイメージが先に立つが、実はかなり高い成長率が期待されている。同ファンドの投資カテゴリーのひとつである「フードエボリューション」領域への投資額は、2012年から2021年までの年平均36%程度で伸びているのだという。「農業・食料関連株の分野は高い成長率がありながら、株価のバリュエーションは割安です。認知度がやや低い分野ですが、これからさまざまな形で発信力を高めることにより、この領域に対する投資家の関心を高めていきたいと考えています」(西岡氏)。

食料問題が深刻化するのは、まさにこれからだ。今後、30年、50年と続く、人類の命に関わる大きな課題だけに、長期的な視点での投資に親和性が高いテーマと考えられる。