テクノロジーの進化は農業を支える重要ファクター
テクノロジーは、これからの農業を考えるうえで重要なファクターになる。これが第三の理由で、まさに今、農業・食料分野において大きなイノベーションが起きようとしている。「さまざまな分野でデジタル化が進むなか、農業分野はそこから取り残されていました。しかし近年、食料不足に対する危機感が高まったこともあり、スマート農業やアグリテックなど、農業とデジタルテクノロジーの組み合わせによって、農業の生産性を向上させる取り組みが注目を集めています。今までの遅れを取り戻すという点においても、これから高い成長期待が寄せられています」(西岡氏)。
また投資対象という観点から見ても、先述した理由の通り農業・食料関連は、なかなかユニークな存在だ。まず、インフレに対する耐性が高いことだ。言い換えると、インフレリスクをヘッジするうえで有効なパフォーマンスが期待できるということだ。米FRBが重視する物価指数である「PCEコア物価指数」の前年同月比と、MSCI ACワールドアグリカルチャー&フード指数(以下、農業・食料関連株式)の値動きを比較すると、物価の上昇に対して、農業・食料関連株式の株価は、素直に連動して値上がりしている(図表1)。しかも、MSCI ACワールド指数という世界全体の株価動向を示す指数を、インフレ時には上回る動きさえ見せている。
有効なのはアップサイドだけではない。マーケット全体が大きく値下がりする場面で、農業・食料関連株式の株価は、小幅の下落率で止まる傾向がみられる。「2008年のリーマンショックで、世界の株価指数は最大54%の値下がり率となりましたが、農業・食料関連株式の株価下落率は44.3%に止まりました。さらに言えば、グロース株と正の相関性が低いという特徴もあります。たとえばナスダック100と農業・食料関連株式の株価の相関係数を見ると、0.39でしかありません」(西岡氏)。