日本より数十年先を行くアメリカでさえ、資産形成の浸透には格差が

日本では、2024年よりNISA制度が新しくなるとお聞きしました。NISAの制度が恒久化し、積み立ての年間枠が拡大するとのこと。老後資金などを目的にした長期投資には、安定的に長期間頼りにできる制度でまとまった額を運用できることが大前提だと思います。その意味で、みなさんの期待も高まっていることでしょう。

NISAという制度や積み立て額が確保されることは喜ばしいことだと思いますが、こういった「枠組み」を整備するだけにとどまらず、一歩踏み込んだ後押しも必要になるのかもしれません。

というのも、ここアメリカでは401(k)※1やIRA※2が導入されて40年以上たっていますが、それがアメリカに暮らす人すべてに浸透して老後資金準備が着々と進んでいるかというと、実はそうでもないからです。

※1 401(k)は雇用主が提供する確定拠出プランで、1978年に始まった。日本の企業型DCにおおむね相当。
※2 IRAとは、Individual Retirement Account/個人退職勘定。401(k)がない人のため、また401(k)があってももっと積み立てたい人のために、雇用とは切り離したかたちで利用できる、日本のNISAに近い制度。タイプA、Bの2種類があり、タイプAは1974年、タイプBは1998年に始まった。

国民の老後資金準備が問題になっているのは、ここアメリカでも同じことです。GoBankingRatesというサイトが、老後資金の必要自己準備額を計算しています。アメリカ50州のうちで最も低コストのミシシッピ州で$505,000程度(6500万円弱)、最も高コストのハワイ州で$1.8ミリオン程度(2億3000万円程度)としています。このような額を準備するには、30年、40年という長期投資での運用が不可欠です。ところが、フィデリティ社の最近の調べでは、アメリカに住む人の半数以上が、老後資金の“準備度”において不安を抱えるレベルであると発表しています。