「投資のお金で日本経済を活気づける」は正しいのか

新NISAの関連記事を読んでいてもう1つびっくりしたのは、現行の一般NISAの買付額のうち日本の上場株式が7兆円を占めていて、「日本経済の成長資金の供給をしている」と捉えられていることです。同時に、つみたてNISAでは海外株式型の投資信託への投資額が大幅に膨らんでいて、今後新NISAが導入されると、「投資資金が海外に流出するおそれがあると危惧する意見もある」とのことでした。

これはなんというか、日本ならではの考え方なのかなと思いました。そもそもNISAのような長期投資を広く国民一般に進めるにおいては、インデックス投資などの高リスク分散・パッシブ投資が最初の選択肢になるかと思います。

そして、インデックス投資で高分散を狙うのならば、「世界分散」を考えるのが王道です。世界の株式時価総額における日本のそれは6%以下であることを考えれば、日本に偏ってばかりの投資はその基本からは逸れています。

どの国でも自国の株に傾倒する傾向(ホームバイアスと呼ぶ※3)はあります。アメリカでもS&P500ファンドなどに集中している方はおられますが、そんな場合は、アメリカ以外の外国株式の重要性を説明し、アメリカ株式と外国株式はその時価総額に応じて60%:40%で組み合わせ、世界の市場にまんべんなく投資する方法をお勧めしています。

※3 ホームバイアスのさらなる詳細は、過去記事『世界経済成長の果実を取り逃す!? 投資における「ホームバイアス」とは』ご参照。

株式投資はリスク分散が基本です。その意味で、例えばアメリカの大企業に働いている人などが自社株をたくさん持つことはできるだけ避けるべきというのが基本ルールです。会社が傾けば、仕事を失うとともに投資資産も失うからです。

それと同じ考え方で、日本に暮らしながら日本株に傾倒するのは好ましくないリスク集中で、老後資金準備には避けた方が良いと思います。

日本の国民の老後資金の準備と日本企業への投資促進とは、2つの別の課題として捉えたほうがよいのではないでしょうか。つまり、国民の老後資金は、全世界への株式市場へのリスク分散をベースに長期的に増やしていく、一方で日本企業への投資は日本国民に限らず全世界の投資家から投資をしてもらえるよう頑張る、という2つの考え方をする、ということです。