値がさ株で株式分割が相次ぐ理由

任天堂だけでなく、最近は株価が大きい上場企業で株式分割の発表が相次ぎました。

【株式分割を発表した主な上場企業】

 

なぜ株式分割が増えているのでしょうか。理由の1つが、株主の数を増やすためだと考えられます。東京証券取引所は株主の数が一定以上でなければ上場を維持できないとするルールがあるのです。

また「流通株式」を基準としたルールもあります。上場株式数から大株主などに固定化された株数を引いた株式のことで、これを満たさなければ上場を続けることができません。

【東証の上場維持基準(一部)】

出所:日本取引所グループ 上場維持基準の概要

上記は2022年4月に導入された新しいルールで、基準を満たせない既存の上場企業は当面の間その適用を猶予する経過措置が適用されていました。

しかし1月25日、東京証券取引所は「論点整理を踏まえた今後の東証の対応(案)」の中で、この経過措置を2025年3月に終了する案を示しました。それ以降は上場企業に本則の基準に従うよう求め、1年以内に改善されない場合は監理銘柄または指定銘柄に指定し、原則として6カ月後に上場廃止処分とする内容です。

これを避けるためには、上場企業は株主の数や流通株式を維持しなければいけません。そこで株式分割を行い、投資しやすくすることで新しい株主の獲得を目指していると考えられます。

また2024年に始まる「新NISA」も株式分割を後押ししそうです。今年1月に株式分割を発表した信越化学工業は、理由に新NISAへの対応を挙げました。新NISAに設けられる「成長投資枠」では年240万円まで株式にも投資できるようになるとされており、最低投資額が枠内に収まるよう調整する狙いがあるとみられます。

上場企業にとって、取引所は資金調達の場でもあり、投資家層の拡大は基本的にメリットがあります。今後も株式分割の発表は増えるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。