大型IPOが不人気な理由
NTTの上場は多くの個人投資家を惹きつけましたが、現在では大企業の新規上場は人気が高いとはいえないようです。その理由の1つに、初値に期待しにくいという点があります。
新規上場(IPO)では公募(株式を新たに発行すること)や売り出し(既存株主が保有株式を放出すること)を通じ、上場前に株式が個人投資家の手に渡ります。既存株主は上場から一定期間は売却が制限されるケースが一般的ですが、個人投資家にこのような制限はありません。従って、新規上場株式の配分を受けた個人投資家は、上場後に売り手に回ることが想定されます。
大企業の場合、新規上場時の公募や売り出しの株数が多い傾向にあります。つまり、多くの株式が個人投資家に割り当てられるため、上場後の売り圧力が強くなることが懸念されるのです。事実、2022年のIPOでは、資金吸収額(※)が大きいほど初値騰落率(※)が悪化する関係にありました。
※資金吸収額:IPOにおいて、公募株式と売り出し株式で投資家から集める金額。「公開価格×(公募株数+売り出し株数)」で算出される。
※初値騰落率:公開価格に対する初値の上昇率または下落率
【資金吸収額と初値上昇率(2022年)】
これらから、新規上場株式は大型より中小型の銘柄の方が投資家の人気が高くなる傾向にあります。IPOに応募する際は、公募株数や売り出し株数をチェックしてみてはいかがでしょうか。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。