「トレンド」への追随は顧客利益に最適か?

投信運用会社に求められる「商品開発力」や「企画力」に変化が起きている。特に、取り扱う商品採用の可否を判断する販売会社の本部の考え方が大きく変わってきた。金融リテール専門誌『Ma-Do』が金融商品の販売関連業務に携わる従業員を対象にした「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」では、本部の傾向として2021年は「トレンドに適合する商品」という“売れ筋”を求める傾向が強かったが、市場の運用環境が悪化した2022年には「商品のコストとリターンの整合性」を重視する傾向が強まったことが分かった。この商品の品質を重視する傾向は、販売現場である支店でも同様の傾向がみてとれる。商品開発力に関する評価の変化は、市場環境が大きく変わりつつある中、今後の投信市場の変化を予感させるものではないだろうか。

 

運用会社ブランドインテグレーション評価は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。

販売会社が取扱商品のラインナップを考える際に、その時の人気商品である「売れ筋商品」を加えたいと考えるのは当然だ。旬の商品であれば、メディアが取り上げる機会も増え、商品説明をする以前に顧客の方が商品内容についてある程度の知識もあり、説明の手間が省けるという側面がある他、オンライン販売でも購入が進むというメリットもある。2022年の旬の商品は、「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信」であり、インデックスファンドなら「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」ということになろう。2020年3月の「コロナ・ショック」による下落からの回復局面では、米国のハイテク大型株が大きな値上がりを演じ、米国株式インデックスに連動するインデックスファンドや米国成長株を対象としたアクティブファンドのパフォーマンスが好調な時期が続いた。

2021年の調査で「トレンドに適合する商品」に対する評価が比較的高かった(本部:41.8%、支店:44.0%)のは、2020年以来の米国成長株投資への人気が継続していたからに他ならない。しかし、2022年になると、米国をはじめ主要国が一斉に利上げを始め、金利上昇を受けてハイテク関連銘柄など高PER(株価収益率)の成長株が大きく下落する展開になった。約2年間にわたって続いていた「米国+成長株に投資チャンスが大きい」というトレンドが崩れたことになる。その結果として、「トレンド」(本部:32.9%、支店:41.3%)よりも、「商品のコストとリターンの整合性」(本部:67.8%、支店:64.1%)を重視する傾向が強まったと考えられる。