検討中とされる「四半期決算短信の任意化」には懸念点も

2022年、金融審議会(首相の諮問機関)は企業の四半期開示についての見直しを開始した。現在は四半期報告書の提出が金融商品取引法によって義務付けられているが、2024年に廃止され、四半期決算短信に一本化される見通しだ。さらに、金融審議会は将来的に四半期決算短信の開示の任意化も検討している。

その背景に、四半期開示を任意化する代わりに適時開示を充実させる狙いがある。業績予想の修正やM&Aなど、投資判断に影響を与える事態が発生した際に適宜公表する体制があれば、一律に四半期開示を求める必要はないという考えだ。また、四半期開示の任意化によって企業や株主がより長期的な収支計画で会社経営を目指すようになるとの期待もある。

一方、開示義務をなくすことで企業の情報開示の習慣やスタンスが後退する懸念もある。企業側にとって、四半期ごとの開示は事務負担が大きいことから回避に動くことは十分に予想される。とはいえ、誰でもアクセスできる四半期決算短信を開示しない企業が増えることで機関投資家と個人投資家の情報格差が開いてしまうというデメリットもあり、金融審議会でも任意化には慎重な意見も出た。

四半期開示の扱いは、世界でも対応が分かれている。アメリカや中国では義務化されている一方、ヨーロッパの中では任意開示に切り替えた国もある。たとえば、フランスは2015年に法的な義務を廃止。ドイツは現在も取引所規則があるものの、フランス同様2015年に法律での義務は撤廃されている。

日本での四半期開示が任意化するかはまだ不透明だが、四半期に限らず決算短信は重要な投資判断材料であることに違いはない。引き続き業績分析や展望を測るツールとして活用していきたい。

文/中曽根 茜(ペロンパワークス)