しかし、公立学校の教職員にはこのような規定は適用されません。「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)によって、残業代が支払われないよう定められているためです。

給特法は、教職員の勤務実態が特殊であり、勤務時間の内外を切り分けることが適当でないとして、給与を4%増額する代わりに時間外手当を支給しないと定めています。

【給特法「教育職員の教職調整額の支給等」(一部抜粋)】
1.教育職員……には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
​2.教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。

出所:e-Gov法令検索 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

しかし、給特法の制定は1971年と古く、現在の状況に沿うものとはいえません。学習指導要領の変更などで労働が長時間化しており、教職員の不満は高まってきました。残業代の支払いを求め、教職員が訴訟を起こすケースも出ています。

このような流れを受け、文部科学省は昨年12月20日、給特法の見直しを含めて検討を行う有識者会議を開催しました。会議は2023年12月末まで開かれる予定ですが、報道によれば今年の春までに給与のあり方などについて論点をまとめる方針のようです。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。