こんなことが実際にありました。
もう15年ほど前、僕の娘が小学生だったときのことです。娘から「パパ、この靴の会社の株、買ったほうがいいよ!」と薦められたのです(娘は父親の投資家という仕事についてぼんやりと理解していて、学校での身近な流行りもの情報を教えてくれる、優秀なアドバイザーでした)。
娘が指さした足元には、スニーカー。「この靴を履くと、速く走れる」という宣伝文句で、運動会で一番を取りたい小学生の間でブームが起きているというのです。「友達の○○ちゃんも、土曜日に買いに行くって言っていた!」。
よく見ると、「瞬足」と名付けられたそのスニーカーは、たしかに見た目もかっこいいし、コンセプトもオリジナリティがあってヒットしそうです。
「どこの会社が出している靴なの?」
「ムーンスター!」
「ムーンスター? 聞いたことがない会社だな。上場していない会社みたいだね。せっかく教えてくれたけれど、投資ができない。残念だね」
「そうなの。ふーん」
このとき、僕はもうちょっと真剣に調べるべきだったのです。実は、ムーンスターはこの頃に社名を変更したばかりで、変更前は「月星化成」という社名でした。僕はこの前の社名は知っていたのです。
数カ月後、新聞記事で「瞬足大ヒット効果! ムーンスターの株価急騰」という見出しを見て、僕は思わず「あっ!」と声を出してしまいました。娘が教えてくれたタイミングで株を買っていたら、3倍から4倍の価値になっていました。
小学生の世界で起きていることは小学生が、中学生の世界で起きていることは中学生が、一番知っています。僕がどんなに作戦を練って、中学生の日常をつぶさに観察しようとしても、中学生の君にはかなわない。
つまり、君にはもう眼力が備わっているということ。友達の間で流行っているもの、まだ流行っていなくても「なんかいいな、これ。使ってみたいな」と感じるものがあれば、その会社がどこかを調べてみてください。
その会社が上場していたら、株価も調べてみるのがオススメです。インターネット検索ですぐに出てくるから試してみましょう。
日常で流行りモノをチェック → 関連する会社をチェック → 上場しているか? → 上場していたら株価は?
この行動の流れを習慣化できると、株式投資で結果を出せるようになるはずです。
ポイントは、すでに大勢の人たちが追いかけている会社ではなく、〝自分だけが知っている〟と自慢したくなる魅力を持つ会社を見つけること。
まだ大人たちが気づいていないタイミングで、勝ちのチャンスをどんどんつかんでいってください。
株式投資とは、単に株価を当てるゲームではなく、「将来、どんな商品やサービスが世の中に必要とされるんだろう?」と考えをめぐらせる体験。
この問いから世の中を見る機会を増やすと、自然と仕事や会社に対する理解が深まっていくし、経済の仕組みもだんだんとわかってくるはずです。
すると、自分が将来どんな仕事をして、どんな人生を送りたいのか、そのイメージも輪郭を成していくでしょう。
勉強がおろそかになるほど夢中になり過ぎないように注意してほしいけれど、中学生ならではのアドバンテージを生かして、投資にもどんどんチャレンジしてみてほしい。きっとこれまで知らなかったたくさんの仕事、多様な会社の存在がカラフルに浮かび上がってきて、将来が楽しみになるんじゃないかなと思う。
14歳の頃の僕である〝君〟に、言っておきたい。
「今から投資を勉強していたら、君は将来、もっともっと投資家として大成功するはずだよ」と。
●第4回『「勉強しない社会人が多いのは、日本にとって由々しき問題」とカリスマ投資家が警鐘を鳴らすワケ』はこちら>>
14歳の自分に伝えたい「お金の話」
藤野英人 著
発行所 マガジンハウス
定価 1500円(税込み)