どれだけ年金改革で目減りを抑えても、将来の給付は減るという現実

2つの改革案がどう着地するのかは、今後の推移を見守りたい。ただし、この改革案によって目減り度合が平等化されたり、軽減されたりしたとしても、今と比べて給付水準は低下するという免れない現実がある。

「年金システムというのは、いわば分配の装置です。厚生労働省がやろうとしているのも、分配の機能が多くの人にとってバランスの良いものになるよう、時代に合わせて調整しているだけのこと。その装置に入ってくるお金そのものは、少子化によって少なくなることがほぼ間違いないわけですから、分配されるお金(=年金給付)も今より相対的に低くならざるをえないのです」(中嶋氏)

その現実に対し、私たちはどうしたらいいのだろうか。中嶋氏は3つのアドバイスを送ってくれた。

「1つは、少子化対策。それも、ただ若い方たちが頑張るということではなく、子どもを持ちたい人、あるいは子どものいる人にとって、子育てをしながら働きやすい環境を社会全体で目指すことです。2つ目は、個々人が長く働くこと。結果として、収入を得つつ、終身で受給できる年金を“厚く”することができるのです」。

ただし、「働くこと」だけにこだわりすぎないのもポイントだと中嶋氏は言う。「年齢を重ねるにつれ、健康リスクも高まります。例えば、65歳や70歳まで働こうと思っていた矢先、病気等によってそれが実現できなくなる可能性は誰にでもあるわけですから」。

そこで重要になってくるのが3点目。「有利な制度を活用しながら、資産形成すること。特に税控除もあるiDeCoは真っ先に取り組みたいですね」(中嶋氏)。

iDeCoや企業型DC、あるいはつみたてNISAなどを活用し、“自分年金”を積み立てていくのが必須の時代になると言えそうだ。自分年金づくりの最大の味方は時間――年金改革の行方は冷静に見守りつつ、今取れる策は、まず始めるという姿勢も大切になるだろう。