投資額の倍増のために不可欠な「経済活性化」という大前提

ちなみに、世界に開かれた国際金融センターの実現については、すでに1997年の金融ビッグバンがそれと同じことを言っているわけで、あれから25年を経ても、今なお重要政策のひとつに挙げているところに、失笑を禁じえません。

もちろん、これらの分科会案が間違っているなどと言うつもりは毛頭ありません。ただ、これらの重要な柱だけでは、何かが足りないような気がするのです。それは極めて根本的なことなのですが、日本経済が低迷を続ければ、分科会の委員の方々が苦労して練り上げたこの案も、絵に描いた餅になる恐れがあるということです。

「日本経済がダメでも、米国をはじめとする海外に分散投資すればいい」という意見もあるとは思いますが、資産所得倍増プランが目指すところの②にあるように、「家計による投資額の倍増を目指す」のであれば、とりもなおさず家計の所得を増やさなければなりません。

もちろん海外の株価が今後5年間で倍の値上がりをし、それによって日本人が海外に投資している分、つまりストックベースの投資額が倍増すれば、資産所得倍増プランの目指すところの一部は実現しますが、今後5年間で海外の株価が倍になるかどうかは、誰にもわかりません。

したがって、家計による投資額の倍増を、フローベースの投資額と解釈するならば、何はともあれ家計の所得を増やし、投資に回せる資金を増やせる状況にする必要があります。そして、家計の所得を増やすためには、多くの日本人が働いている日本企業が、安心して給与を増やせるような環境を整えなければなりませんし、そのためには日本の景気拡大、経済活性化が大前提になります。

つまり、人口の減少が続いても日本経済が活気を失うことなく、少なくとも欧米諸国並みの経済成長率を実現できる政策を考えることこそが、「資産所得倍増プラン」の要諦であり、NISAの抜本的拡充や恒久化は、些末な話でしかないのです。