政府が示すNISA制度の拡充には実現に課題

今年9月、岸田首相がニューヨーク証券取引所でスピーチを行いました。バブル経済の崩壊から30年。この間に日本経済はさまざまなコストカットをすることによって、スリムで引き締まった経済を実現したものの、ここから更なる対応が必要だということで、5つの優先課題を提示しました。

1.人への投資
2.イノベーションへの投資
3.GX(グリーン・トランスフォーメーション)への投資
4.資産所得倍増プラン
5.世界と共に成長する国づくり

首相官邸のホームページに掲載されているスピーチ内容のテキストを見ると、資産所得倍増プランに関する内容が、他のものに比べて明らかに薄いことが分かります。

「日本には、2000兆円の個人金融資産がある。現状、その1割しか株式投資に回っていない。資産所得を倍増し、老後のための長期的な資産形成を可能にするためには、個人向け少額投資非課税制度の恒久化が必須だ」。

以上です。

他の4点については、かなり詳細に語っているのですが、資産所得倍増プランについては、これだけでした。どのくらい少ないのか。首相官邸のホームページに掲載されている、スピーチ内容を起したテキスト文章の行数で比較すると、

1.人への投資・・・・・・・・・・16行
2.イノベーションへの投資・・・・9行
3.GXへの投資・・・・・・・・・・9行
4.資産所得倍増プラン・・・・・・・2行
5.世界と共に成長する国づくり・・・8行

行数が多いから中身が濃いとは言えませんが、あまりにも少ないと思いませんか?

聞くところによると、これしか言えなかったというのが真相のようです。現在、新しいNISA制度を2024年から実現するために、さまざまな調整が行われている最中ですが、「システム対応が間に合わない恐れ」が浮上して、本当に2024年からスタートできるかどうか、微妙になっています。そのため、岸田首相は「個人向け少額投資非課税制度の恒久化が必須」としか言えなかったというのです。