国民所得が増えなければ、家計の資産所得も増えない
それはともかくとして、大事なのは資産所得倍増プランの実現可能性でしょう。プランそのものの実現可能性という意味ではなく、資産所得倍増プランに対応した施策を実行することで、本当に資産所得を倍増させられるのか、ということです。
この視点で書かれたレポートが、三井住友信託銀行の調査月報(2022年11月)の時論で、「家計の資産所得倍増は実現するか」という題が付けられています。
一文を引用してみましょう。
「国民所得とは、GDP(2020年:538兆円)に海外からの利子・配当所得等(同:20兆円)を加え、固定資産減耗や純間接税等を控除して算出されるもので、国民が消費・貯蓄・投資に自由に使えるお金を表す。
この国民所得(同:377兆円)は、これを生んだ生産活動参加者に対する報酬として、①勤労者(雇用者報酬:同283兆円)、②企業(企業所得:同68兆円)、③資金・資本・土地(財産所得:同26兆円)の三者に分配される。家計が得る資産所得は、③財産所得に含まれ、利子所得は同6.9兆円、配当所得は同6.4兆円となっている。
この構造から明らかなように、家計の資産所得は国民所得というパイ全体の大きさ、さらには国民所得から分配された財産所得の大きさに制約されることになる」。
つまり、家計の資産所得の増減は、国民所得というパイ全体の増減に左右されるため、まずは国民所得が増えなければ、家計の資産所得が増えないことになります。
しかし、国民所得の大半を占めるGDPは、ご存じのようにほとんど伸びていません。この文章にもありますが、「2000年以降の伸び率は年平均0.2%増」でしかないのです。