家計の資産所得を増やすには雇用者報酬増が優先課題
家計の資産所得を増やすためには、預金や株式、投資信託などに預ける、あるいは購入するための原資が必要です。その原資は、人々が働くことによって得るお給料、つまり雇用者報酬が増えなければなりません。
しかし、これもこの文章で指摘されているように、「2000年以降、雇用者報酬は長らく横ばい圏内に止まり、先立つもの=家計金融資産に流入する資金は90年代後半の半分程度まで減少した。その要因としては、国民所得の伸び悩みに加えて、企業分配率はやや高まる一方、労働分配率は振れを伴いつつ低下傾向になったことが挙げられる」ということです。
よく企業の内部留保が問題になりますが、預金や株式、投資信託などに預ける、あるいは購入するための原資を捻出できるようにするためには、企業が内部留保を高めるだけでなく、雇用者報酬を増やす努力をしなければ、家計の資産所得倍増は絵に描いた餅になることを、この文章は指摘しているのです。
確かに、確定拠出年金やNISAといった制度の整備は必要です。しかし、それも肝心の所得が増えなければ、誰も積極的に利用しようとは思わないでしょう。いくらFPや投資関係者が声高に、「つみたてNISAは良い制度です。皆さん、どんどん利用しましょう」などと言ったとしても、「笛吹けど踊らず」という結末になるのは、目に見えています。
岸田首相は、日本がこれから対応すべき優先課題のひとつとして、「資産所得倍増プラン」を取り上げていますが、そこで表明した「個人向け少額投資非課税制度の恒久化が必須」は、決して本筋の話ではありません。
そうではなく、その他に挙げた4つの項目が実現に向かって動き出した結果、日本のGDPが底上げされ、企業が安心して社員の賃金を引き上げられるようになって初めて、資産所得倍増の可能性が高まる、と考えるべきなのです。