やはり賃金高めの金融業界。でも年齢で大きく差が出る側面も

そしてこの間、金融業・保険業は、他の業種に比べて比較的高めの賃金を享受しています。本稿では16業種すべての比較ではなく、「製造業」、「情報通信」、「卸・小売」、「金融業・保険業」の4業種で比較してみましたが(グラフ1)、「金融業・保険業」の賃金は25-29歳で「情報通信」を上回り、45-49歳までその優位が維持されています。もちろん、「製造業」や「卸・小売」を大きく上回っているのは、言うまでもありません。確かに、金融業・保険業は他の業種に比べて、高所得者であると言えます。

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より著者一部編集

ただ、この数字を別な角度から見ると、「高所得でプチセレブ的な金融業界・保険業界」というイメージとは違う景色が見えてきます。

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より著者一部編集

グラフ2は、年齢階級別の賃金の前期比推移を示したものです。どの業種も、若い時は大きく伸びて、年齢階級が上がるほど伸び率が落ちていくのが分かります。
これは当然のことで、賃金の絶対額が低い、若い年齢階級の時ほど賃金の伸び率は高くなり、賃金の絶対額が高くなるほど伸び率は小さくなるわけですが、「金融業・保険業」の場合、賃金の伸び率が上がるのは30-34歳までで、それ以降は伸び率がプラスを維持していても低下傾向をたどり始めます。

55-59歳になると、50-54歳の時に比べて6.32%も減額されます。これだけ大きく減るのは、多くの方が想像するとおり、55歳で役職定年を迎え、役職手当などがカットされるからです。

さらにその先を見ると、60-64歳では55-59歳の時に比べて、27%も減額されます。65歳定年が定着しつつあるとはいえ、60歳以降の雇用延長では、賃金の大幅カットという厳しい現実に直面することがわかります。

したがって、世間的には高給取りで知られる金融業界・保険業界ですが、そこで働いている人は、賃金の伸びが比較的早い時期から鈍化することを、しっかり理解しておく必要がありそうです。

会社勤めの人たちにとって年収1000万円は、高給取りと言われるひとつの基準です。実際、国税庁の調査によると、年収1000万円を超えている人の割合は、7%弱と言われています。

そのため、年収1000万円プレイヤーの人たちは、自分のことを「勝ち組」であると認識しているのかも知れませんが、ここに大きな落とし穴があります。よく指摘されることですが、生活水準を大きく引き上げてしまう人が多いのです。