日本のNISAに近い、アメリカの「IRA」制度とは

アメリカでよく使われるリタイヤメント準備方法には401(k)というのがありますが、これは雇用主が提供する確定拠出プランです。1978年に始まりました。401(k)は、年間限度額が$20,500、50歳以上なら$27,000(2022年)と大きく、所得税控除で積み立てができます。ただ、401(k)を提供する雇用主に雇われている人はいいですが、そうではない人、例えばフリーランスで働く人、自営の人、主婦(夫)などの中には401(k)を利用したくとも利用できない人もたくさんいます。

401(k)がない人のため、また401(k)があってももっと積み立てたい人のために、雇用とは切り離したかたちで利用できるのが、IRA(Individual Retirement Accounts)です。これが日本のNISAに近いものです。

個人の利用できるIRAはざっくり大きく分けると2タイプあり、1つは積立額が所得税控除になり、投資利回りは非課税のまま運用され、将来引き出すときには全額所得税がかかるものです(タイプA)。勤労している期間は労働収入があり、年金生活になるリタイヤ後の期間に比べて、所得税率が高いのが一般的です。所得税率が高いうちに所得税控除で貯め、将来増えた資産をより低い所得税で引き出して使うというのが基本的な考え方です。

もう1つのタイプは、積立時は所得税を払ってから積み立てますが、運用は非課税のままされ、将来も非課税のまま引き出せるというものです(タイプB)。これはとくに働き始めたばかりの若者には向いていて、まだ収入が低いうちに低い所得税を払って積み立て、その後何十年もの間非課税で大きく増やし、老後はそのまま非課税のまま使えます。

401(k)、IRAいずれも制度そのものに期限はなく“恒久化”されています。401(k)もIRAも、それまでに普及していた確定給付制度(企業年金制度)に代わり、個人が投資をしてリタイヤメント資産を準備するためにつくられました。過去50年弱をかけて、その都度新しいバリエーションがつくられ、運用ルールが整えられました。