どんな運用?を考える
運用経験の有無でも運用スタイルは変わる
これまでに投資信託等を活用してきた経験者と、iDeCoで運用に初めて挑戦する場合では考え方も異なります。それぞれの場合に分けて考えてみましょう。
【運用経験者の方】
運用益非課税のメリットをフル活用
運用経験者の方が意外に見落としがちな点があります。
それは、iDeCoはNISA(少額投資非課税制度)と異なり、運用商品のスイッチング(預け替え)をしても運用益非課税が続くというメリットです。このメリットを生かすために、スイッチング(運用商品の売却と購入)を活用しましょう。投資信託の活用で利益が一定程度出たら、定期預金にスイッチングして利益を確定し、その後の運用環境に応じて投資信託を購入し直す、といったことが可能です(スイッチングには数日程度の時間がかかるので、市場動向等には注意が必要です)。
また、運用経験者からの質問として多いのが、販売手数料とスイッチング時の手数料です。iDeCoや企業型DCでは、販売手数料がかからないことが一般的です。また、スイッチング時の運用管理費用(信託財産留保額)も発生しない投資信託が主流となっています。
【初めて投資信託を購入される方】
シミュレーションを活用してみる
運用に不慣れな方は、最初の資産配分が重要です。
iDeCo加入者用のWEBサイトの多くには、資産配分シミュレーションが用意されています。ご自身のリスク許容度に合わせた資産配分をするために、シミュレーションを活用しましょう。シミュレーションにより資産配分を決めた後に、運用商品を選択していきます。
【ターゲットイヤー型投資信託の特徴を知る】
2016年の制度改正以降、ターゲットイヤー型投資信託の活用が増えています(※)。
ターゲットイヤー型投資信託は、ターゲット年(通常はリタイアメント時期)に向かって、リスク(株式割合)を自動的に下げていくのが特徴のバランス型投資信託です。たとえば、ターゲットイヤーが2030年の商品は、1970年前後に生まれた人が60歳になる時期をターゲットにした運用商品です。
受取が近づいてきた世代にとって、思わぬ市場の急落は避けたい事態です。しかし、将来の予測は誰にもできません。それゆえに、50代後半からは投資信託を定期預金にスイッチングする人も出てきます。急落が生じず、逆に運用環境が好調であれば機会ロスとなります。
しかし、ターゲットイヤー型投資信託によっては、運用環境の急落に対応できるものがあります。ターゲットイヤー年にはすべて安全資産に変更されるもの、マーケット急変に備える「下値保全措置」のあるもの、などです。こういった投資信託の商品性を比較する場合は、「目論見書」を確認してみましょう。
※2016年の制度改正は、「運用しない人」にフォーカスし、運用商品を選びやすくすることも制度改正の目的の一つでした。米英の確定拠出年金では、ターゲットイヤー型投資信託がすでに主流であったこと、も背景にあります。
50代は資産形成の最後のチャンス
50代は、お子さんの教育費用の増加や家のリフォーム代、親の介護など、さまざまな費用がかさむ時期でもあります。「使うお金」を重視するあまり、iDeCoの掛金を減額したくなることもあるかもしれません。しかし、50代は資産形成の最後のチャンス。iDeCoなどの税優遇手段を最大限活用することが重要といえるでしょう。