——今月のDCファンドの状況について教えてください。

ここではDCファンドの資金流出入動向について確認します。まずは図3左側のグラフをご確認ください。当月の資金流出入額は約570億円の流入超となりました。前月の510億円から約60億円増加しました。資金流入額は、多い順に、複合資産型(273億円)、外国株式型(218億円)、外国債券型(47億円)となりました。資金流出したアセットクラスは国内株式型(▲16億円)のみでした。国内株式型が資金流出超となるのは6ヵ月ぶりとなります。国内株式は7月8月と2ヵ月連続で株価が上昇したこともあり、利益確定売りの動きが優勢になったものと考えられます。

次に図3右側のグラフをご覧ください。直近6ヵ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が1,891億円、複合資産型が1,901億円と人気を二分しています。その他のアセットクラスでは、外国株式型、複合資産型から大きく離れる形ではありますが、国内株式型に約400億円の資金が流入しています。国内株式型はパッシブファンドを機動的に売買する加入者も多く、直近2ヵ月の国内株式市場が比較的堅調に推移したため単月では資金流出超となりましたが、一方で国内株式型は根強い人気のあるアセットクラスであり、6ヵ月の累積では資金流入しているようです。

図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大画像表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

では、続きまして、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか確認しましょう。今回は外国株式型と外国債券型の2つのアセットクラスについて見てみます。

まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図4)。ランキング表のとおり、上位15本のうち12本がMSCIコクサイ指数などの世界株価指数に連動するパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。世界の株式市場に投資をするという商品性の分かりやすさのほか、運用管理費用が相対的に安いことが要因と言えるでしょう。

一方、相対的にコストが高いアクティブファンドからは、3ヵ月ぶりに「ラッセル・インベストメント外国株式F(DC向け)」がランクインしました。こちらのファンドは2005年8月に設定され、約15年の運用実績がある歴史のあるファンドです。マルチ・マネージャー運用という特徴的な商品性を有しており、グロース運用やバリュー運用などそれぞれの運用スタイルが得意なファンドマネジャーを複数の運用会社から選定し、それらを組み合わせて一つの外国株式ファンドとして運用しているものです。ファンドマネジャーの得意分野を活かしながら、それらを組み合わせることで外国株式市場全体を上回る投資成果を得ることを目標としている点で、特徴的な商品性と言えるでしょう。

図4 2022年8月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大画像表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に、外国債券型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図5)。ランキング表のとおり、上位15本のうち13本までがFTSE世界国債インデックスなどの世界債券指数に連動するパッシブファンド、インデックスファンドとなりました。

商品性の分かりやすさのほかに、債券市場は低金利環境が続いてきた中で債券のリターン水準が低く、リターンに占める運用コストの部分が大きかったこともあり、運用管理費用が低いパッシブファンドに人気が集まっているものと思われます。足元では各国が利上げに踏み切る中、債券投資から得られるリターン水準は上がりつつありますが、パッシブファンドが引き続き人気を得ているようです。

図5 2022年8月 外国債券式型(DC専用ファンド) 拡大画像表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

最後に、複合資産型で特殊な動きがありましたのでご紹介します(図6)。複合資産型の月間資金流入額ランキング1位は野村アセットマネジメントの「みらいバランス・株式10(富士通企業年金基金DC向け)」となりました。このように、特定企業が専用ファンドを設定し、かつ大幅な資金が流入したことは特徴的な動きだったと思います。

図6 2022年8月 複合資産式型(DC専用ファンド) 拡大画像表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ