DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。第3回最新DC投信マーケット解説は、三菱アセットブレインズの持田和秀氏に解説していただきます。DCの投資信託のモニタリングにお役立てください。

※この記事は、2022年9月22日(木)に実施したWEBセミナー「 最新DC投信マーケット解説 2022年9月号」を記事化したものです。

——早速今月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。

図1のグラフをご覧ください。こちらは過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。国内債券を除く全ての資産が2年前の水準を上回っておりますが、2021年半ばから足元にかけては米国を中心とした世界の中央銀行による政策金利引き上げを受けて、景気減速懸念から多くの資産が上値の重い動きとなっています。

図1 分類別累積パフォーマンス 拡大画像表示

※ 公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について月間収益率をカテゴリー別に単純平均し、 24ヵ月前を100として指数化したもの。 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に分類別の月間パフォーマンスランキングを確認します(図2)。ここでは当月8月のパフォーマンスに注目しましょう。2022年8月にパフォーマンスが良かったのは、エマージング債券とエマージング株式のカテゴリーです。エマージング債券は+3.0%、エマージング株式は+2.6%上昇しました。この2つのカテゴリーは、7月はリターン下位にありましたが、8月は一転上位に来ています。

この背景として、米国FRBの金利引き上げペース鈍化への期待感、さらには原油や天然ガスの価格が上昇したことも要因と言えます。2022年3月以降、米国FRBは非常に早いペースで政策金利の引き上げを行ってきましたが、7月以降FRBが今後の利上げペースを鈍化させることへの期待感が強まったこともあり、8月は新興国の資産が上昇しました。また、資源価格が上昇したこともブラジルやインドネシアなどの資源国のパフォーマンス上昇要因となりました。ただし、下旬にかけてはFOMC議事要旨や8月26日に開催されたジャクソンホール会合で、FRBがインフレ抑制に立ち向かう姿勢を改めて示したことで、エマージング債券やエマージング株式も月末にかけて上昇幅を縮小しました。

図2 分類別パフォーマンス 拡大画像表示

※公社債投信等を除くDCファンド(専用・共用)について各期間別の収益率をカテゴリー別に単純平均し作成したランキング表 出所:三菱アセット・ブレインズ

マイナスが大きかったカテゴリーは、外国REITと外国債券のカテゴリーです。外国REITは-2.2%、外国債券は-1.2%下落しました。8月の前半は米国の利上げペース鈍化に対する期待感が高まる一方、月末にかけては再び強い利上げ姿勢が示されたこともあり、米国を始めグローバルに金利は上昇基調となりました。それに伴って債券価格は下落しました。また、金利感応度の高いREITも併せて下落しました。