また、顧客からの預かり金は信託銀行などに預けるよう義務付けられました。マウントゴックス事件では預かり金も約28億円が流出しています。今回の改正で、暗号資産だけでなく現金の安全性も高まったといえるでしょう。

さらに改正資金決済法は、取引所に取引所の資産と顧客資産を分けて管理するよう義務付けています。併せて今回の改正で、取引所の破綻時は、顧客資産が優先的に返還される優先弁済権が認められました。これにより、万が一取引所が倒産したとしても、顧客資産が保全される効果が期待できます。

暗号資産の不正流出対策はどうする?

資金決済法の改正を受け、取引所の安全性は飛躍的に高まりました。しかし、ハッキングを完全に防ぐことは困難です。利用者である私たちにも、不正流出対策の実施が望ましいでしょう。

しばらく売却する予定がない暗号資産は、取引所から引き出してはいかがでしょうか。取引所や暗号資産独自の送金コストが発生する可能性がありますが、攻撃の対象となりやすい取引所から切り離すことで安全性の向上が期待できます。その際はできるだけコールドウォレットに保管するようにしましょう。

また「秘密鍵」を明かさないことも大切です。秘密鍵とは銀行口座における暗証番号のようなもので、もし第三者に知られるとウォレットから暗号資産を引き出されてしまいかねません。絶対に他人に教えないようにしてください。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。