iDeCoは60歳まで引き出せない、しかし60歳まで守られる

ところで、一度詐欺に遭った人は、また詐欺に遭う可能性が高いと言われます。

(もちろん先述した通り、金融庁のHPを確認するなどして、未然に防いでいただきたいですが)、もし仮にそのようなことが起きた場合、次回も今回のようにクレジットカードのチャージバック事由に該当すると判断されるとは限りません。多額の返済が残るかも知れません。債務整理が必要になる場合もあります。

そうなった場合、iDeCoはどうなるのでしょうか?  実は、たとえ自己破産しても、iDeCo口座内の資産は守られます。確定拠出年金法32条により、国税滞納処分による場合を除き、給付を受ける権利は差し押さえることができません。つまり60歳まで“引き出せないがゆえ”に、60歳までは守られるのです。ただ、受け取って預金口座に入金された時点で、差し押さえの対象となります。

ただ、いっぽうで60歳までは“引き出せないがゆえ”に、「万が一の時」にすぐに引き出せるお金は別途用意しておく必要があり(生活防衛資金といいます)、それには現預金が適しています。

――というと、まず現預金の貯金を最優先にしたくなりますが、亜由美さんの場合は、同時にiDeCoに最低金額の5000円で始めておくのが良いでしょう。掛金全額所得控除されるほか、iDeCoを一時金で受け取る場合は、掛金拠出期間を勤続年数とみなした退職所得控除が差し引かれて課税所得を算出します。よって、iDeCoの税控除メリットを少しでも長く、多く使うため、なるべく早く始めておきましょう。

お小遣いとして使えるお金は月2万円までとして、5000円でiDeCo、2万円は貯金とします。ボーナスと合わせて現預金でまずは80万円程貯めましょう。約1年は「ガマン」です。

その約1年をがんばったのち、iDeCoを2万3000円に増やします。できればお小遣いはそのまま2万円を継続し、月の余剰金やボーナスのお金でつみたてNISAを始めましょう。つみたてNISAなら、iDeCoと違い、いつでも引き出せます。昇給するにつれ、つみたてNISAの積立額を増やしていきましょう。

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ここまで解説すると、亜由美さんは1回の積立金額が少なくても時間を味方にして大きな資産を作れる、そして、それがiDeCoであれば、途中で何があっても守られると、心底安心されたようでした。

資産形成は「コツコツ」が一番――そう理解された亜由美さんは、もう怪しげな情報に惑わされることはきっとないでしょう。

​※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。