情報商材の沼にハマって… FP相談に訪れた経緯

主な相談内容は、情報商材詐欺によってマイナスとなってしまった収支の修正と今後の資金作りということでした。お話をうかがううちに、詐欺に遭われたきっかけはご自身の中で徐々に膨らんでいく将来への不安が原因だったと分かりました。

気ままなひとり暮らしを楽しんでいる亜由美さん。会社に退職金制度(中小企業退職金共済)はあるから、年金で不足する分を補えば良いくらいに思っていました。しかし、少子高齢化により自分の世代は年金を大してもらえない、 とSNSやWeb記事をたびたび見かけ、しかも決まってセットで書かれている「だから、自助努力が必須」という文言に触れるにつれ、「私も何かしたほうがいいのだろうか?」と将来に不安を覚えるようになります。また、月に約2万円の奨学金返済にも“負担感”があったそうです。

そんな中、タイミング良く流れてきた「誰でも稼がせます」「手っ取り早く資産を10倍に」という謳い文句が躍るメール。このようなメールは、いつもならスルーしてしまうのですが、「誰でも稼げる」とはどのようなものなのか、興味本位からリンクをクリックし、ランディングページにたどり着いてしまいます。

うさんくささはあるものの、開発者が日本を代表する大学院の卒業証書を手にした写真も掲載されていてすっかり信用してしまいました。「こんな良い方法があったのか」と、自分が限られた情報にアクセスでき“得した気分”にさえなった、とその時のことを打ち明けてくれました。

登録は無料、さらに先着100名に運用資産30万円をプレゼントするというので、登録だけならば損はありません。そして、いざ登録すると稼ぐための“手法”は、「暗号資産FX」であり、「シグナル配信通りに売買すれば、誰でも稼げる」と言われ、約15万円の情報商材を購入してしまいます。

しかし、全く稼げません。先着100名の運用資金30万円ももらえませんでした。稼げないことクレームを入れたら、さらに全自動で「楽に稼げる」高額な商材を紹介されます。それでも稼げないと言ったら、さらに高額な特別なメンバーへの入会を勧められます。「今まで損をした分を取り戻さなくては」という焦りから、ほぼ反射的ともいえる速さで、次々と申し込んでしまったそうです。こうして複数の商材を買ったものの、亜由美さんはいっこうに稼げず、しまいには業者と連絡が取れなくなってしまい、だまされたことに気づきます。

ここまでお読みの方は「そんなバカな」と思うかもしれませんが、損をどうにか取り戻したい一心で冷静さを失ってしまうのは、詐欺・悪質商法被害の“あるある”なのです。

さらにいえば、業者は支払う人からお金をどんどん搾り取るだけでなく、被害者のメールアドレスまでお金に換えます。そのため、1つの情報商材で被害に遭うと、次々に情報商材のメールが送られてくることもよくあります。損を取り戻そうと焦っている被害者は、同じ間違いを繰り返し、被害が大きくなってしまうのです。

亜由美さんの場合は、複数の業者と関わる前に、だまされたことに気づきましたが、貯金もなくなり、クレジットカードを限度額まで使い切ってしまい、その支払いに追われる事態に。

ここからは実際に亜由美さんに送ったアドバイスを解説していきます。