岸田政権は「貯蓄から投資」を掲げ、年内にも「資産所得倍増プラン」の方針を定める予定だ。与党の税制調査会を中心に議論を進め、具体策を検討する。

同プランの目玉施策として位置づけられているのがNISAの拡充だ。それを受け、2022年8月金融庁はNISA(少額投資非課税制度)の恒久化と投資枠の拡充を求める2023年度の税制改正要望を提出、8月31日にはその内容を公表した。

プランがどのようなものなのか、それに伴いどのような動きが考えられるのか、今こそ確認しておきたい。

「資産所得倍増プラン」の主な内容とは?

5月、岸田首相が英国・シティーでの講演で打ち出した「資産所得倍増プラン」は、6月に閣議決定され、政府が公表した資料※1内で以下のように書かれている。

NISAの抜本的拡充、iDeCo制度の改⾰等の政策を総動員し、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定
※1「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)

詳細は年末までに策定予定だが「家計の預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を作る必要がある」として幅広い支援策を予定しているという。税制調査会が中心となり議論を進め、具体策を検討する流れだ。

2022年6月に日本銀行が発表した「2022年1-3月期の資金循環統計」※2によると、家計が保有する金融資産残高は今年3月末時点で前年比2.4%増の2005兆円だった。そのうち有価証券は320兆円となっており、対する現金・預金はその3.4倍である1088兆円に上る。
※2「2022年第1四半期の資金循環」より(図表1)部門別の金融資産・負債残高(2022年3月末)

この比率を見れば、資産所得を倍増させるために、超低金利でほぼ「お金が育たない」現預金から、利回りの期待できる有価証券への大規模なシフトが必須なのは明らかだろう。日本総研の試算によれば、年13兆円ものシフトが必要だという※3。
※3 日本総研「資産所得倍増プラン達成に必要な投資額と政策オプションとは」