おひとりさまの終活
専門商社の部長を務める文蔵さん(仮名、60歳)は10年前に妻を亡くして以来、1人暮らし。娘は米国の大学を出て今はオランダに住んでいます。出身は九州地方で、地元には妹が2人おり、両親はどちらも介護施設に入居中です。車が好きなので、ドライブを兼ねて週末はよく同僚や同級生とゴルフをしています。
文蔵さんは、入院(詳しくは第3回記事)をきっかけに、家族代わりサービス(詳しくは第7回記事)に関心を持つなど、これから先に起こることへの備えをしたい気持ちが出てきました。
ある日、ゴミ出しに行くとマンションの掲示板に「終活勉強会」のチラシが貼ってあるのが目に留まりました。市役所が近くの公民館で開催するようです。妻はPTAの役員から始まって、地域での知り合いが多く、こういう催し物によく参加していて、亡くなったときは文蔵さんも知らない人がたくさん会葬に訪れて驚いたものです。ふとそんなことを思い出して、文蔵さんは講座に参加することにしました。
勉強会は思ったよりも盛況で、少し文蔵さんよりも年上の女性が多く参加していました。市の高齢者担当部署の人がエンディングノートを配布し、中身や活用方法の説明がありました。市がエンディングノートを作っていることに文蔵さんはまず驚きましたが、その中身がかなり細かいことにも驚きました。