おひとりさま(60歳男性)の今そこにある危機

文蔵さん(仮名、60歳)は専門商社の部長です。10年前に妻を失くして以来、独り暮らしをしています。娘は米国の大学を出て今はオランダに住んでいます。文蔵さんの出身は九州地方で、地元には妹が2人おり、両親はどちらも介護施設に入居中です。文蔵さんは車が好きなので、ドライブを兼ねて週末はよく同僚や同級生とゴルフをしています。

いつものように友人たちとゴルフをして帰宅した文蔵さんは腰に違和感を覚えました。その日は調子が良かったので少し無理をしてしまったようです。翌朝はベッドから起き上がることができなくなってしまい、困り果てた文蔵さんは救急車を呼ぶことにしました。玄関まで鍵を開けに行くことも難しいので、マンションの管理人に電話して自宅の鍵を開けてもらいました。救急隊員は管理人に同乗を求めましたが、それはなんとか断ります。管理人は慣れているのか、貴重品のほかに着替えと靴を袋に入れて持たせてくれました。

病院ではレントゲン検査や投薬を受けて帰ることになりました。パジャマ姿で搬送されたので、管理人が持たせてくれた着替えと靴は助かりました。痛みはかなり良くなりましたが、1人で自宅まで帰るのは不安だったので、思い切ってゴルフ仲間のSNSグループに「誰か家まで送ってくれませんか」と投稿してみたところ、近くに住んでいる人が引き受けてくれました。長く住んでいる自宅マンションですが、体を痛めてみると、気付かなかった小さな段差やちょっとした階段がとても大きな壁に感じられることに文蔵さんは驚きました。