安定した老後のためには、給与の7.49%を継続的に拠出

月11.5万円の上乗せ年金のための前提は、次のようになっています。
①    平均的な賃金カーブを算出(男性標準労働者の平均給与(賞与込み)を使用(2018年賃金構造基本統計調査)
②    給与のピーク時(53歳)の掛金が拠出限度額の5.5万円になるように計算。この場合の給与に対する掛金の割合が7.49%
③    ①の賃金カーブを基準に、それぞれの年齢の給与に対して掛金率7.49%で毎月、拠出(40年間)
④    運用利回り1.5%(企業年金連合会の2019年度決算 確定拠出年金実態調査では想定利回りの平均は1.9%)
⑤    受給時は手数料(iDeCoの給付手数料432円)を考慮:消費税8%の時に試算
▶運用利回りを2%に変更すると2,648万円に達し、年金月額は13.2万円

「給与の7.49%」を一つの基準として、ご自身の状況を検討してみてはどうでしょうか。皆さんが活用しているDCには、だいたい、給与の何%ぐらいを拠出していますか? その際、お勤め先が採用している企業年金制度などによっても、考え方は異なります。以下の例でみてみましょう。

【企業型DCのみを実施している企業の会社員】
企業型DCの事業主掛金が7.49%よりも少ない場合、ご自身の給与からの拠出を積極的に考えてみましょう。

企業型DCにマッチング拠出の設定がない場合は、今年10月以降の制度改定を活用して、iDeCoへの掛金拠出を検討します。拠出上限額は、2万円を限度として5.5万円から事業主掛金をひいた金額となります。

企業型DCにマッチング拠出の設定がある場合は、iDeCoかマッチング拠出か、の選択となります。両方を同時に行うことはできません。マッチング拠出のメリットは、手軽にできる点です。企業型DCの器が使えるため、会社に申し出るだけで活用でき、口座維持手数料も会社負担です(まれに本人負担の場合もある)。また、税の手続きも企業が実施してくれます。

マッチング拠出がiDeCoと比較して不利な点は、拠出上限額が事業主掛金以下に限定されていることです。事業主掛金が2万円よりも低い場合は、iDeCoのほうが多くの掛金を拠出でき、結果的に税の優遇金額も大きくなります。

事業主掛金のみで7.49%を超えている場合、分散投資を実践することで、1.5%の運用利回りをめざしましょう。多くの企業型DCのWEBサイトでは、シミュレーション機能が提供されています。今の運用を続けたら、60歳時点でいくらになるのか、を試算してみましょう。そのうえで、ご自身の給与から拠出するかどうか、iDeCoにするかマッチングにするか、を検討します。

十分な資産形成が行えそうだ、という場合は、使い道が老後資産に限定されない、つみたてNISAを活用する、という考え方もあるでしょう。

【企業型DC、DBの両制度を実施している企業の会社員】
企業型DCに加え、DBもある場合、2024年12月からは「他制度掛金相当額」が企業型DCのWEBサイトでもわかるようになります。企業型DCの事業主掛金と「他制度掛金相当額」を合わせて、給与の何%にあたるのか、を計算してみましょう。

なお「他制度掛金相当額」と企業型DCの事業主掛金額の合計額が5万円を超える場合、iDeCoへの拠出はできなくなるため、ご注意ください。

マッチング拠出が使える場合はマッチング拠出を、マッチング拠出が使えない場合はiDeCoを使うことを検討してみましょう。マッチング拠出か、iDeCoか、は企業型DCのみを実施している企業の場合と同様です。

【DBのみを実施している企業の会社員、もしくは公務員】
前述のとおり、2024年12月からは、iDeCoの拠出上限額は2万円となります。ただし、「他制度掛金相当額」が3.5万円を超える場合は、その分、iDeCoに拠出できる金額が減ります。また、「他制度掛金相当額」が5万円を超えると、iDeCoの活用ができなくなります。

2022年5月現在で、企業年金制度がない企業の会社員は、iDeCoの拠出限度額2.3万円に対し平均掛金額が16,684円です。一方、公務員の場合は拠出限度額1.2万円に対し11,017円と、上限金額まで拠出している人が多そうです。拠出上限額が2万円まで引き上げられると、掛金を増額する人も増えると思われます。

DC制度は創設から20年以上が経過し、数度の制度改定が行われてきました。新制度の中で自分がどんな風にDCを活用していけば目標を達成できるか、問い合わせができる体制が整えられている金融機関を選択することが、資産形成には重要であるといえます。