「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。
そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説する。第6回は「IPO投資」について。株価の大幅な上昇による値上がり益が期待できるIPO投資のメリットやリスクについて紹介する。
IPOとは「未上場企業の株式が市場に公開されること」。そこにはどんなメリットがあるのか
通常、個人投資家が企業の株式を取引するためには、その企業が「上場」している必要がある。未上場企業の株式は一般には公開されておらず、おもに企業の代表や役員が保有しているのだ。
この未上場企業の株式が、上場に先駆けて投資家に販売されることを「IPO」と呼ぶ。なお、IPOとはInitial public Offeringの略語で、「新規上場株式」や「新規株式公開」とも訳される。
上場前に株式が販売されるのは、上場後の株取引を活発化させるためだ。市場での取引は、その銘柄を売りたい投資家と買いたい投資家の両者がいなければ成立しない。IPOは上場前に株式保有者を一定数確保し、上場後に売り手側となる投資家を増やす目的で行われる。そのため、IPOと上場は2つでひとつの関係にあるといえるだろう。
企業がIPOを行い上場するメリットには次のようなものがあげられる。
(1)知名度や信用度の向上
(2)資金調達力の向上
まず、上場することで企業の知名度や信用度の向上が見込める。
企業が市場へ上場するためには、公認会計士による2年分の財務監査や、証券会社による引受審査を通過しなくてはならない。上場水準を満たしているかどうか、証券会社や証券取引所の審査を通過する必要がある。
例えば、2022年4月にスタートした新たな市場区分のうち、スタンダード市場へ上場するためには
・株主数400人以上
・直近1年間の利益の額が1億円以上
といった形式的な条件に加え、企業の継続性や収益性、経営の健全性などが審査される。上場はこの厳しい審査を通過した証明にもなるため、企業としての信頼を勝ち取ることができるのだ。上場後は新聞の株式市況欄など、マスコミを通じて企業名がより多くの人に知られるようになる。知名度の向上は、人材の確保にも有利に働くと考えられる。
次に期待できるのが資金調達力の向上だ。非上場企業の資金調達方法は、親族や知人など限られた株主からの出資や銀行などからの借り入れに限られている。しかし、上場すれば証券取引所を通じて株主から大きな資金の調達が可能となる。
ほかにも、すでに株式を所有していた代表や役員などが、取引で利潤を獲得できるようになるといったメリットもある。