好調だったはずの米国株式市場が軟調な展開を見せている。米連邦準備制度理事会(FRB)が進める利上げを嫌気する投資家心理への影響が拭えず、国の経済成長にも不透明感が広がっている。米国の株価指数として代表的なダウ工業株30種平均だけでなく、「米主要3指数」と呼ばれるナスダック総合指数やS&P500種指数も、5月に入って低調に推移し、歴史的な下落が続いている。

ここで連日の悲観相場を繰り返し解説してもいいが、少し気分転換の意味を込め、ニュース報道でよく耳にする「株価指数」について振り返りたいと思う。相場格言に「疑わしきは何もするな」とあるように、先行き不透明感漂う相場ではいったん立ち止まり、一息ついてみるのも重要だ。知らなかった意外な一面が見えてくるかもしれない。

日本でお馴染みの企業がならぶ「ダウ工業株30種平均」

米ニューヨーク市場では、ダウ工業株30種平均が5月18日、19日と連日大幅下落した。ウォルマートやターゲットといった米小売り大手の決算が市場予想を下回ったためとみられる。インフレに伴う物流費や人件費などのコスト増が消費者の購買力にも影響しかねない状況で、インフレが企業業績に対する圧迫材料になっている。

これら株式市場のニュースでよく耳にする米主要3指数は、アメリカを代表する株価指数。ダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数、S&P500種指数の3つを指す。その中で最も歴史のあるダウ工業株30種平均とはどのような株価指標だろうか。

ダウ工業株30種平均(Dow Jones Industrial Average)は、ウォール・ストリート・ジャーナルを発行する米ダウ・ジョーンズ社が算出している。日本では「ダウ平均」や「ニューヨーク・ダウ」「NYダウ」などと呼ばれ、ニュースなどで耳にしたことがある人も多いだろう。

ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している合計30銘柄を対象に算出。算出が始まったのは、1896年で100年以上も前のこと。開始当初は12銘柄で、1916年に20銘柄に増えた。そして1928年に、現在の30銘柄で構成されるようになった。「工業」と付いているだけに、広い意味での工業に関する企業30社が対象。鉄道や公共事業は算出の対象外で、別にダウ輸送株20種平均やダウ公共株15種平均の指数がある。

現在はアップルやアメリカン・エキスプレス、ボーイング、シスコシステムズ、セールスフォース・ドットコム、ウォルト・ディズニー、ゴールドマン・サックス・グループ、IBM、インテル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、コカ・コーラ、マクドナルド、マイクロソフト、ナイキ、P&G、ウォルマートなどで構成されている。

外食からスポーツ用品、飛行機、クレジットカードなど一見すると工業と関連が薄そうな企業まで幅広く対象になっている。日本でもおなじみの企業がずらりと並んでおり、いかに米製品が日本にあふれかえっているかが分かるだろう。銘柄は産業構造の変化など時代の流れに合わせて、ウォール・ストリート・ジャーナルの編集陣が入れ替えている。

算出方法は、30社の工業株銘柄の株価を単純に株数で割った株価平均型の株価指数。ダウ式修正平均というもので、銘柄の入れ替えや権利落ちなどがあっても過去との連続性を失わないように修正が入る。