走行環境の改善とともに望まれる自転車マナーの向上

警察庁によると、自転車が関連する事故は2009年に約15.6万件であったが2019年には約8万件とほぼ半減したものの、自転車と歩行者による事故は2009年の2946件から2019年の2692件と減少幅は1割程度だ。自転車が混雑する車道を避け、歩道を利用しがちなことも背景にあるらしい。

自転車道と歩道を明確に区分するインフラ対策が急務だ。自転車王国のオランダでは自転車専用道路が多く、パリでもセーヌ川沿いの自転車用の専用道路は自動車道よりも幅が広い。自転車での移動を促す世界的な動きに足並みをそろえる意味でも、安心できる自転車走行のための環境整備が急がれる。

もちろん、自転車を利用する人のマナーも肝要だ。まず、自転車が“軽車両”であることを再認識することが求められる。自転車に乗る人は車の往来が激しい車道を避け、つい歩道を走りがちだが、歩いている人がいるときは必ず降車するなどのマナーを守ってほしいと常々思う。

また、車を運転する人にとって、歩行者はもちろんだが、自転車に乗る人の思いがけない不意の行動は怖いものだ。特に高齢者に多いが、車や人の往来を事前に確認することなく、突然左から右へなどと方向転換する人がいて、冷や汗をかくことがある。

ライトを点灯しないで走行することも危険だ。点灯していない自転車2台が正面衝突したのを目の当たりにしたことがある。双方ともかなりの重傷となった。

自転車事故による賠償額が1億円を超えることもある。自転車保険に単独加入したり、火災保険や自動車保険に特約として付加できる個人賠償責任特約に加入したりするなどして、予期せぬ事故に備えることも欠かせない。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。