「人生100年時代」と言われるようになって久しい昨今。資産形成等で老後資金の準備をしつつも、少しでも長く働いて、長生きリスクに備えたいと考える人は多いでしょう。

そうは言っても、年功序列・終身雇用が当たり前に機能していた時代に社会人になり、経験を積んできた「中高年男性」にとっては、定年後はどうやって働けばいいか、むしろ今からどうキャリアに向き合えばいいのか分からないと悩んでいる人も多いようです。さらに、コロナ禍によって、急速に働き方改革が進められることも悩みを深くしているかもしれません。

今回は特別に、日本総合研究所 スペシャリスト・小島明子氏が多様なデータで「中高年の働き方」の現状を明らかにしつつ、悩める中高年男性、ひいては共に働く多くの人に前向きな提言を送る、書籍『中高年男性の働き方の未来』より第2章『中高年男性をめぐる働き方の課題』の一部を公開。

さらに、最終回となる今回は、本書でも多角的なアドバイスを送っている、社会人材コミュニケーションズ代表取締役CEO社長宮島忠文氏から中高年男性に向けたメッセージも!(全4回)

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※本稿は『中高年男性の働き方の未来』(小島明子著・きんざい)の一部を再編集したものです。

意欲の高い高学歴中高年男性が抱えるジレンマ

 日本総合研究所では、民間企業かつ東京都内のオフィスに勤務し、東京圏に所在する4年制の大学あるいは大学院を卒業した中高年男性45~64歳に焦点を当て、2019年に意識と生活実態に関するアンケート調査を実施した(以下、「日本総合研究所の調査」)。GMOリサーチの調査パネル2000人から回答を受領し、レポート集計対象は、出身大学の回答があった1794人(内訳:45~49歳(432人)、50~54歳(447人)、55~59歳(454人)、60~64歳(461人))である。

そのなかで、就業継続に関する意思決定に影響を与える労働価値観について調査を行った。一般に、就業継続にあたっては、仕事に対する本人の考え方が影響すると考えられる。具体的には、「働くことによって得られる便益」と「働くことに伴う費用」を天秤にかけ、便益が費用を上回れば就業を行うという意思決定が下されると考えられる。ただし、便益、費用ともその考え方は個人によって異なる主観的なものと考えられる。

「働くことによって得られる便益」は、働くことによって得られる給与所得や会社における安定的な地位の確保といった〝外的報酬〟と、仕事を通じて得られる自己成長や仕事そのものの面白さ・楽しさといった〝内的報酬〟に大別することができる。

「働くことに伴う費用」は、仕事をすることによって諦めなければならない家族・プライベートの時間といった時間に関するものに加え、仕事によって負わなければならない精神的なストレスや肉体的な疲労といったものが含まれる。これをまとめると、「働くことに伴う費用」は、〝ハードワークに対する許容度合い〟と言い換えることができる。