では、どういうタイプの高学歴中高年男性がどれくらいの割合存在しているのだろうか。それを明らかにするために、日本総合研究所の調査では、「外的報酬に対する欲求」「内的報酬に対する欲求」および「ハードワークに対する許容度合い」に関係する設問の回答結果から、各々の多寡を表す指標を算出し、就職活動時点とアンケート回答時点における、労働価値観に基づく男性の分類を行った。

①「ハードワーク許容度」「内的報酬欲求」「外的報酬欲求」いずれも弱い男性群……仕事に対する意欲が喪失している高学歴中高年男性は27.8%と全体の約4分の1程度存在しており、就職活動時点の19.6%に比べるとやや増えている。一般的に、中高年男性の働く意欲が低いという批判が生じるのは、この層が増えることと関連があると考える。

②「ハードワーク許容度」「外的報酬欲求」は弱く、「内的報酬欲求」は強い男性群……就職活動時点では9.1%だったのが、年齢を経ると21.2%にまで増えている。ハードワークや出世・昇進への関心は低いが、仕事への意欲は高い男性である。ある程度、経済的な余裕もでき、体力的な理由からハードワークがむずかしいが、仕事へのやりがいを重視している男性である。

③「ハードワーク許容度」は弱いが、「内的報酬欲求」「外的報酬欲求」いずれも強い男性群……就職活動時点では10.7%だったのが、年齢を経ると14.0%にまでやや増えている。体力の衰え等から、ハードワークはむずかしいものの、出世・昇進や報酬への欲求は強く、仕事へのやりがいも重視している層である。

④「外的報酬欲求」は弱いが、「ハードワーク許容度」「内的報酬欲求」いずれも強い男性群……就職活動時点では12.7%だったのが、年齢を経ると10.5%にまでやや減っている。報酬は低くてもやりがいさえあれば、ハードワークも耐えられるという働き方ができる男性というとイメージがつきやすい。

⑤「ハードワーク許容度」「内的報酬欲求」「外的報酬欲求」いずれも強い男性群……就職活動時点では36.1%だったのが、年齢を経ると18.1%にまで大幅に減っている。就職活動時点では夢や希望があったものの、現実社会に向き合い年齢を経ることで、すべての欲求を満たそうという男性が減っていることは容易に想像できる。

就職活動時点とアンケート回答時点の違いという点では、ハードワークが許容できないと考えている男性が約39%から約63%に増加している。しかし、アンケート回答時点で、ハードワークが許容できないと考えている男性を含めても、「内的報酬に対する欲求」の強い男性が全体の半数以上を占めている。就職活動時点と比べてアンケート回答時点で増える高学歴中高年男性のタイプは、「外的報酬欲求」には差があるものの、「ハードワーク許容度」が低く、「内的報酬に対する欲求」が強いタイプだといえる。なお、この傾向は、文系出身か、理系出身かという点で、大きな違いはみられていない。