さらに、西村直哉・江波戸赳夫氏※4は、世界80カ国以上を対象に、さまざまな価値観を調査した「世界価値調査」(2015年)の結果において、日本人の権威や権力への尊重の意識は他国よりも低く、日本人が権威や権力を圧倒的に嫌っている状況をふまえて、「面従腹背」のような状況の発生や、管理職というだけでは指示を聞いてもらえない状況を生んでいることなどによるマネジメントのむずかしさを指摘している。シニア社員と若手の「共存共栄」がうまくいきづらいのは、コミュニケーションの問題や人事評価制度等の職場環境に加えて、それらの調整役としての役割を担うべき管理職のマネジメント能力不足にも原因があるといえる。
若手とシニア社員の分断のような状況を解消しなければ、「共存共栄」を実現させるのはむずかしい。まずは若手社員がもつ不公平感のもとになっている評価制度を透明化し、もし、評価制度に問題がないと考えるのであれば、若手社員からの不満が解消するように制度を理解してもらう努力が必要である。そしてシニアの仕事の不透明さは、周りの人が何をやっているかわからない組織体質や、コミュニケーションの不足などにも原因があるため、管理職のマネジメントのあり方にも目を向けなければならない。多様な人材が働くこれからの時代では、管理職に調整役としての高い能力が求められ、企業もそのような管理職を教育支援していくことが必要だといえる。
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※1 朝日新聞デジタル「朝の妖精さん知ってますか 大企業の隅、若手社員悩ます[老後レス時代]」(2019年11月11日付)
※2 企業活力研究所「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究報告書(平成24年3月)」
※3 パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」(2021年6月2日)
※4 西村直哉・江波戸赳夫『世代間ギャップに勝つ ゆとり社員&シニア人材マネジメント』(幻冬舎)
『中高年男性の働き方の未来』
小島明子著
発行所:きんざい
定価:1,980円(税込)